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市販後試験で臨床アウトカムを実証できないFDA新薬がほとんど、しかし支障なく販売継続できている

2017-09-21

(キーワード: FDA新薬、代替エンドポイントで承認、市販後臨床試験、患者アウトカム実証に失敗、支障なく販売継続)

 「患者に一刻も早く新薬を届けるために、早期に販売承認を、有効性安全性の確認は市販後臨床試験で」とはよく言われる。このことが機能するためには、仮免許とも言える早期販売承認が納得できるものであるとともに、市販後の臨床試験が滞りなく行われ、期待とは別の結果となったときは仮免許の取り消しや一時中止が速やかに行われることが欠かせない。

 米国ニューヨーク州立大学医学生のAMピース氏たちは、FDAが限られたエビデンス(科学的証拠)で承認した新薬の市販後臨床試験の結果について調べ、解決すべき大きな問題があるとの論文をBMJ誌電子版2017年5月3日号に掲載している (※1)。以下は論文の要旨である。
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 Drugs@FDA データベースとPubMedを用い、FDAが2005年1月1日から2012年12月31日の期間に、1つの主要(pivotal)試験、または疾患の代替マーカーに焦点をあてた1つまたは複数の主要試験に基づいて承認したすべての新薬を同定した。
 それらの新薬の市販後に発表された、実薬またはプラセボ対照を用い最初FDAにより承認されたと同じ適応に対する効力を検討した前向き比較臨床試験の全報告をレビューした。

 これらの報告は3つのカテゴリーに分類される。
1) 唯一の試験 (single trial)
2) 疾患の代替マーカーを用いた試験
3) それらの両方に該当する試験
のそれぞれに基づいて承認された適応についての市販後臨床試験である。
 
 2005年から2012年の期間に FDA は123の適応についての117の新薬を承認した。われわれは承認後5.5年(中央値)の間に出版された758論文を同定した。
 それらのほとんど (554/758, 73.1%) は疾患の代替マーカーに基づいて承認された適応についてのものである。ほとんどの市販後臨床試験は実薬対照を用いていた。1)のカテゴリーでは67/77 (87.0%)、2)では 365/554 (65.9%)、3)では100/127 (78.7%)である。また効果の代替マーカーをプライマリーエンドポイントとしていた。1) 2) 3)それぞれ、51/77 (66.2%)、512/554 (92.4%)、110/127 (86.6%)である。123の適応のうち43 (35.0%)では、市販後臨床試験が行われた形跡がなかった。
 
 承認後に出版され、患者の臨床アウトカムをプライマリーエンドポイントとして用い、1つまたはそれ以上のランダム化比較対照遮蔽試験で効果において優越性を示した承認された適応の割合は、わずかに7.3% (9/123)に過ぎなかった。1)のカテゴリーでは18.2% (6/33)、2)では2.0% (1/49)、3) では4.9%(2/41)である。これらの所見は、新薬承認の前後に臨床意思決定および規制政策に必要なものとして知らされるべきである。
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 代替エンドポイントなど限られたエビデンスで承認された後、市販後に患者臨床アウトカムをプライマリーエンドポイントを用いランダム化比較対照遮蔽試験で真の優越性が実証された新薬が、相対的に規制が厳しいとされる米国で、10分の1以下の 7.3%に過ぎないという今回の調査結果は衝撃的である。

 有効性を実証できない新薬はおとがめがなく、販売が継続されているのである。著者たちが結論で記載しているように、このことはまさに実地臨床に携わる医療専門家や医薬政策を立てる専門家、さらに医療を受ける患者に知らされるべき事実である。これらを個人で調査するのは大変なので、市販後臨床試験結果をデータベース化して定期的にレビューする公益機関が必要である。

 今回の論文は2017年5月3日に BMJ(British Medical Journal)誌電子版に掲載された。これと前後して NEJM(The New England Journal of Medicine)5月25日号(376(21); 2001-4) には、「迅速承認と高価な医薬品―問題の多い組み合わせ」の論説が掲載されている。

 著者のWF Gellad氏(ピッツバーグ大/Veterans Affairsピッツバーグヘルスケアシステム)、Kasselheim AS氏 ( Brigham and Women’s Hospital/ Harvard Medical School)は、迅速承認され宿題の市販後ランダム化試験(RCT)を実施していない製薬企業が増加し、有効性安全性が不確かな「医薬品」に対し高価な支払いがされている現状の是正のため、3つの提案をしている。
 1) 効果が実証されるまで迅速承認された「医薬品」の保険償還に金銭的な抑制を課す
 2)宿題をタイムリーに実施させ、遅延した企業の保険償還を中止するなど経済的な罰則を課す
 3) 迅速承認され、年10万ドルまたは合意された他の閾値を超えた医薬品は販売1-2年後に公式な経済的インパクト分析の対象とする。
          (T)