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FDAが糖尿病治療剤オングリザとネシーナ(DPP-4阻害剤)に心不全の警告を追加

2016-09-01

キーワード:DPP-4阻害剤 心血管系リスク 心不全 警告

有効性についてのエビデンスが乏しく、逆に循環器系イベントの害作用が問題になっている経口糖尿病剤であるが、DPP-4阻害剤オングリザ(サキサグリプチン)、ネシーナ(アログリプチン)のランダム化比較臨床試験でみられた心不全リスクをFDAがどう扱うかが注目されていた。

2016年4月5日FDAはこれらの薬剤に心不全の警告を加えたので、紹介する。
FDA MedWatch alert 2016.4.51)

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 FDAの医薬品安全性情報は、2型糖尿病治療に用いるDPP-4阻害剤である、オングリザとネシーナは、心不全のリスクを増大する可能性があり、警告を新たに追加すると発表した。
この情報は、2014年2月11日付けの医薬品安全性情報2)を更新する内容であるとした。

 警告の内容は、医師に対しては、オングリザあるいはネシーナ服用者で、心不全を合併する患者では、処方を中止し、血糖コントロールをモニターして必要な場合には他の薬剤を選択すべきとするものである。
また、患者に対しては、息切れ、倦怠感、足のむくみ、体重増加等の心不全症状に気づいたら、直ちに主治医に連絡すること、ただし、自己判断による服用中止はすべきでないという内容である。

 警告を発出した背景として、DPP-4阻害剤の心血管系リスクを評価するために製薬企業が実施した大規模臨床試験結果を検討した結果、オングリザ、ネシーナともに、プラセボに比較し、心不全による入院が増加した.
オングリザの場合は、プラセボ群が2.8%に対し、治療群が3.5%であった。ネシーナでは、プラセボ群の3.3%に対し、治療群は3.9%であったことを紹介している。

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 FDAは、2014年2月11日付医薬品安全性情報では、オングリザの心不全リスクの増大を示した臨床試験結果に関して、死亡や心筋梗塞等の主要な循環器系リスクは増加していないとして、医師に対して治療の継続とフォローを指示した。一方で、製薬企業に対して徹底した分析を求め、その結果に基づいて調査結果を公表するとしていた。

 当注目情報では、心不全リスクの増加を示した2つの大規模臨床試験結果について、NEJM上の糖尿病専門医師による両論文の著者への質疑を通じて紹介した3)。そして、本来、糖尿病治療は、心血管系合併症を防ぐことが目的であり、心血管系リスクの低下を証明することを求めるべきであることを指摘した。心不全リスクが高まることが明らかであるならば、使用する意義そのものを問う必要がある。(N.M)