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真に患者に利益のある糖尿病治療薬の開発のために必要なこと

2016-05-11

キーワード:2型糖尿病治療薬,承認基準,医療技術評価機関(HTA),患者中心のアウトカム

 2型糖尿病治療剤が糖尿病合併症のリスクを減らすかどうかのエビデンスのないままに、新薬承認され、市場で使われている現実を転換すべき時期である。

 BMJ電子版2015年10月9日号1)は、このような現状を改善するために、承認基準と医療技術評価基準の見直しが不可欠として2つの戦略を提案する論文を掲載しており、ここに要旨を紹介する。
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 2型糖尿病治療薬の市場参入の認可基準は、真のエンドポイントである心血管系リスクの低下ではなく、代理エンドポイントである血糖値の低下を唯一の指標としている。現在30種類以上の医薬品が市場に存在するが、無作為化大規模試験による長期的な有効性と安全性の根拠を持つものはほとんど存在しない。「タイムリーな市場へのアクセス」が承認規制の正論と化し、この20年を経て、市場を撤退する医薬品は拡大し、黒枠警告は増加した。例えば、血糖降下薬であるロシグリタゾンは、ブレークスルー薬との前評判であったが、市販後心血管系リスクの増加が発見され、2010年に欧州市場から撤退した。

 糖尿病治療薬の治療価値を改善するために提案する2つの戦略は、行政上、財政上、相当な負担を強いるが、それらは、将来的な治療への利益を比較考慮して判断すべきであり、長期的に他の予防的治療薬にも重要な意味を持つ。

 第一の戦略は、新薬承認における規制当局の承認基準を厳しくすることである。すなわち、承認前に代理エンドポイントである血糖値の低下のみで測定する短期的な現在の第形蟷邯海任呂覆、真のエンドポイントである心血管系の利益を証明する長期的で実際的な大規模比較試験を課すことである。それには、厳しいプロトコールに従うのではなく、患者のニーズに基づいて治療を最適化し、リスク、費用、利便性を考慮して患者が主体的に治療に取り組むことを促す、シンプルで実際的な試験が必要である。そのような試験こそが、患者や介護者にとって重要な、真のエンドポイントに関する評価を明らかにし、いわゆる患者中心のアウトカムをもたらす。

 第二の戦略は、保険支払い側と処方側に新薬の保険償還、処方の決定等をサポートするためのエビデンス情報を提供する医療技術評価機関(HTA)が、新薬の市場参入許可を厳密に実施すること、即ち、真のエンドポイントでの利益が証明された時にのみ新薬の市場参入を許可することである。欧州の多くは医療技術評価機関を持つ。例えば、英国のNICEは、見かけ上は承認機関より厳しいエビデンスの評価基準を持っている。しかし現状は試験を実施する力量と資金の不足のため、承認機関に提出された短期的な試験結果に依存し、長期的な効果が曖昧なまま市場参入を認可している。この第二の戦略の重要なカギは、実際の治療現場において真の有効性、安全性のエビデンスを証明することである。患者を新薬と既存薬とに無作為に割り付けし、服薬データと電子ヘルスデータを日常的に集め、そこから冠血管系発作や死亡等に関する追跡データを抽出することにより、長期的心血管系利益とリスクを評価することは可能である。医療技術評価機関(HTA)は、このような長期的な試験結果に基づき、全面認可、支払い保留、あるいは不許可や市場撤去を促すべきである。

 糖尿病のための新薬の有効性を評価する指標として血糖降下作用を受け入れることは、血糖値をより下げる医薬品が微小血管系と冠血管系リスクを有意に減少させることを暗示することになり、このような指標による評価は正しくない。政府と製薬企業に対し、新薬の利益に関する実際的根拠を明らかにすることが可能で、費用対効果のある接近方法を提案する必要がある。「この薬は患者にもたらす結果を改善する明確な根拠を持っているのか?」という単純な疑問が、政府、支払い側、医師、患者の全決定へと導くであろう。
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 我が国における医薬品の承認審査は、従来は薬事分科会のもとにおかれた第一部会、第二部会での審議を経て薬事分科会で審議するという2段階を経ていたが、迅速化の要請に基づき、部会での審議なしに薬事分科会で承認に至るものが多く存在する。その結果、2013年度新薬承認数は、欧米のほぼ2倍、審査期間は2/3まで短縮されている2)。しかも、我が国には公的医療技術評価機関がいまだ実現していない。有効性、安全性の安易な審査により認可された多数の新薬が、市販後評価を曖昧にして使われ続ける日本の現状は、欧州以上に深刻である。(N.M.)

文献
1)Huseyin Naci,et.al;”Rethinking the appraisal and approval of drugs for type 2 diabetes”,BMJ,2015;351;h5260

2)小林和道「新薬承認にみる薬事上の特別処置」政策研ニュースNo.42(2014年7月)
医薬品政策研究所

関連資料・リンク等