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FDAは承認を早めた医薬品の承認後モニターに失敗していると米国の監査機関GAOが指摘

2016-05-11

(キーワード:ファーストトラック薬、安全性モニタリング、代理エンドポイント)
 
 米国FDAには、4つの承認を早めるプログラムがある。優先審査、ファーストトラック指定、迅速承認、画期的療法指定の4つである。新薬の約4分の1はこれらのプログラムの1つないしそれ以上を適用して承認されている。しかし、FDAはそれらの追跡を正しく行っていないと、米国議会の政府監査機関GAO(政府説明責任オフィス)のレポートが述べている。少数例または短期間の臨床試験で承認された医薬品がこのような状況にあることは、患者に多くのリスクをもたらすとRosa DeLauro議員が指摘している。

 以下はそれを報じたBMJ online 2016年1月20日号(※1)の要約である。

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 GAOレポートよると、米国FDAは迅速承認プログラムの1つを通過した後の市場に出た薬剤の追跡が適切にできていないという。迅速審査の間に特定された潜在的な安全の問題については一般人口でのモニタリングが計画されているが、追跡されているのは半分にも達していない。当局が方針を変更した年以降、FDAスタッフのデータ入力負担は大きくなり、新しく追跡された安全問題のデータベースへの入力数は3分の2まで落ちているのだ。FDAが企業に実施を要求していた市販後調査は、半分以下しか期限までに終わっていず、多くがまだ始まってもいない。その中心的理由の1つに情報技術の問題がある。企業の市販後調査のデータは、手入力しなければならず、500以上の調査が提出されているが未処理のままで検討されていない。そのためFDAはデータベース化によって安全性問題を追跡することを放棄し、他の手段で市販後の問題を同定しようとしている。

 新しく承認された薬のおよそ4分の1が、FDAの4つの迅速承認プログラム−優先審査、ファーストトラック指定、迅速承認、画期的療法指定のうちの1つかそれ以上のプログラムに承認されている。新成分のうちファーストトラック指定の割合は60%にものぼる。FDAは迅速承認された薬の追跡について、標準のプロセスによる承認薬よりも詳細な追跡を何らしようとしていない。この迅速承認のプログラムが、開発の過程で、より少ない、短期間の、小規模の臨床試験を用いることを特別に許可していることから、GAOレポートはこれを争点としているのだ。

 コネチカット民主議会のRosa DeLauro議員は、Bloomberg Newsに次のように語った。FDAは薬剤をすばやく市場に出す際に、真に安全で効果的であることを確実にするための基礎的な資源とリーダーシップを欠いている。より少ない、短期間、小規模の臨床試験で可とするならば、安全性問題の十分な追跡と、市販後調査のレビューは絶対に重要である。
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新薬の承認を早める4つのプログラムとは:

1)ファーストトラック指定:
重症の状態を治療し、医療ニーズが満たされていない領域の薬剤の開発を促進し迅速に審査するためにデザインされたプロセスで、開発計画や承認に必要なデータ収集、評価するバイオマーカーなどについて、FDAと頻回の相談などを通して開発から審査準備を支援する。ファーストトラック薬指定は製薬企業からの要求にもとづきFDAが指定の要件を満たすのかどうかを60日以内に判断する。

2)画期的療法指定:
重症疾患の治療を意図した薬剤であって、予備の臨床的証拠において、臨床的に意味のあるエンドポイントを、既存治療を越えて改善する薬剤を、すばやく開発し審査するようデザインされたプロセスである。

3)迅速承認:
新薬の試験には、その薬剤が患者の生存や感覚・機能に対して実際に本当の効果を表すのかどうかを知るのに多年を要する。臨床的に意味のある治療に対する陽性治療効果は「臨床的便益」として知られるが、薬剤の有効性の傾向を測定するのに期間が長引く可能性があることから、1992年にFDAは迅速審査の制度を制定した。医療ニーズが満たされていない領域の重症状態に用いる薬剤について、代理エンドポイントに基づいて承認することを許容したことで、FDAはこれらの薬剤をより早く承認することができる。

4)優先審査:
米国で市販される各薬剤はFDAの詳細な審査を受けなければならない。1992年に、PDUFA(処方薬ユーザー法)のもとFDAは薬剤の審査時間を改善する2層のシステム〜標準審査と優先審査を創設した。優先審査指定は、標準審査が10ヶ月かかるのに対して6ヶ月以内に適用できるようアクションをとることである。優先審査指定は、もし適用された場合にその薬剤が安全性または重症状態の治療・診断・予防の有効性を向上する標準的な治療と比較して、全体的な注意事項や評価のための資源を指定するプロセスである。

 わが国でもこれにならってさきがけ審査指定制度が2014年に導入された。2015年に6品目(シロリムス;結節性硬化症に伴う血管線維腫、NS-065/NCNP-01;デュシェンヌ型キンジストロフィー、S-033188;A型またはB型インフルエンザウィルス感染症、BCX7353;遺伝性血管浮腫の患者を対象とした血管性浮腫の発作の管理、ASP2215;初回再発又は治療抵抗性のFLT3遺伝子変異要請急性骨髄性白血病、ペムブロリズマブ(遺伝子組換え);治癒切除不能な進行・再発の胃癌)が試行的なとりくみとして指定された。他国との競争において、より早く市場に出すことを優先して、真の臨床的便益の判断、安全性の確認が軽視されてはならないだろう。これまでも代理エンドポイントが真の有用性証明にはならないことが問題視されてきたが、代理エンドポイントの多用やこれまでのような市販後調査の延長では患者を危険に晒すことになるだろう。本注目情報でも迅速承認の危険性を指摘する情報をとりあげてきた(※3,4,5)。FDAの迅速承認薬への対応は引き続き注意して見ていく必要がある。 (N)
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