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不眠症に対する不適切と思われるベンゾジアゼピン処方が日常的になされており、地域薬剤師はその検出と改善に貢献できる

2016-05-11

キーワード:ベンゾジアゼピン系薬剤,地域薬局,不眠症治療,治療の適切性

 2015年10月28日に、当会議は、ベンゾジアゼピン系薬物の依存症や離脱症状に関する医療関係者の認識と日本における同薬物の処方実態を改善するため、関係各企業、厚生労働省、文部科学省、関連学会に対して「ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書」を提出した(ベンゾジアゼピン系薬物の問題点と要望の内容については当会議のホームページを参照)1)。

 ここでは、特に高齢者へのベンゾジアゼピン系薬物の使用中止を推進する上での地域薬局の役割に注目した論文2)を紹介する。
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 不眠症治療に対するベンゾジアゼピン系薬物の処方実態と、地域薬局が不適切な処方を検出する役割を果たし得るかを調査する目的で、イタリアの8地域薬局の薬剤師によって患者インタビューに関する観察研究が行われた。

 薬剤師が、ベンゾジアゼピン系薬物を1回以上処方された181人の患者にインタビューを行った。不眠症のために処方されていた患者に関する調査結果は、以下のとおりである。

 ベンゾジアゼピン系薬物は、半数(81名)が不眠症のために処方されていた。そのうち、治療期間3年以上が64%を占めた。61.7%は65歳以上の高齢者を対象とし、高齢者の92%が3か月以上の長期治療者であった。7名が2種類以上を併用しており、2名は標準用量を超えていた。32名(39.5%)が薬の中止を希望し、17名(21%)は急な中止を試したが、全員が失敗し、3年以上継続していた。中止を希望する患者のうち、16名は医師に相談していなかった。

 この観察研究から、ベンゾジアゼピン系薬剤の慢性的使用や、2種類以上のベンゾジアゼピン系薬剤の処方が科学的根拠なく一般化していることが判明した。65歳以上では、睡眠薬治療は、転倒、抑うつ、記憶低下、のリスクが増し、ベネフィットを上回る。2012年、高齢者に不適切なおそれのある治療を公表したベアーズ基準4)は、高齢者には、不眠症の治療にすべてのベンゾジアゼピン系薬剤を避けるべきことを提案している。

 不眠症の治療にあたって従うべき5つの理論−〆任眥磴ね効量を使用する、間欠的に使用する(2~4回/週)、C惨間の処方(3~4週以上は通常使用しない)、そ々に中止する、ッ羯澹紊良毀欧離螢丱Ε鵐匹紡个靴討楼属廚忘導しないこと−も一般化されている。

 また、最近の研究が、ベアーズ基準に基づいてベンゾジアゼピン系薬剤の不適切な使用を減らすべく高齢者を援助する上で薬剤師が積極的な役割を果たし得ることを明らかにした3)。
地域の薬剤師は、不適切な医薬品の使用を評価する独自の位置にある。入手した情報に基づき、敏速に科学的根拠に基づく勧告に従って、処方を再考することや、薬の適切な漸減療法を開始することなどを、一般医に連絡し得る立場にある。人々にとって、また薬の適切な使用にとって、よりよい健康のアウトカムをもたらすために、医師と薬剤師との共同が推進されなければならない。
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 日本の高齢者における不眠症治療の実態は、論文の要旨で紹介した研究結果と同様の状況にあるのではないだろうか。高齢者におけるベンゾジアゼピン系薬剤の認知機能や精神症状に及ぼすリスクを過小評価せず、薬剤師が患者に根拠のある情報を提供し、自ら中止する意志を促し、医師への働きかけを支援する活動は非常に重要であると考える。(N.M.)

2)Silvana Anna Maria Urru.et.al;”Role of community pharmacist in the detection of potentially inappropriate benzodiazepines prescriptions for insomnia” Int J Clin Pharm 誌電子版 2015年7月22日号

3)Cara Tannenbaum,MD,MSc,et.al;“Reduction of Inappropriate
Benzodiazepine Prescription Among Older Adults Through Direct Patient Education“.JAMA Intern Med. 174(6).890-898(2014)