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米国内科医師会(ACP)がジェネリック医薬品処方推進の臨床ガイドライン

2016-04-19

(キーワード: 米国内科医師会ACP, ジェネリック医薬品、処方推進、臨床ガイドライン)

 ジェネリック医薬品は先発医薬品のコピーである。先発医薬品と同じ活性成分を含み、先発医薬品と同じ製品基準(standards)に合致しなければならない。このことは同じ効力を持ち、同じ安全性基準に合致せねばならないことを意味している。ジェネリック医薬品の最大の特徴は患者にとって安価なことである。

 しかし、ジェネリック医薬品が存在するにかかわらず、多くの先発医薬品が用いられている現実がある。1915年に創立され、内科学専門誌Annals of Internal Medicineを月2回発行している米国のAmerican College of Physicians[ACP、米国内科医師会ないしは米国内科(医)学会と訳される]の臨床ガイドライン委員会が、「臨床医は高価な先発医薬品でなく、それが可能ならば、ジェネリック医薬品を処方すべき」との臨床ガイドラインを、患者を対象とした要約記事とともに、Annals of Internal Medicine誌2016年第1号に掲載しているので要旨を紹介する。

 これらの記事はACPのウェブサイトにも掲載されている(※1, ※2)。
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 米国における医療費支出と達成されるアウトカム(成果)との間に存在する矛盾について、より安価で同じ効果の選択肢があるのに不必要な支出をしていることに注意が向けられている。ジェネリック医薬品の過少使用はその重要な例である。

 ジェネリック医薬品についての5つの質問に答えるために文献レビューを行った。

1) ジェネリック医薬品があるときに、どの程度先発医薬品が使用されているか
2) ジェネリック医薬品は医薬品使用の継続にどのような影響があるか
3) 先発医薬品とジェネリック医薬品が同様の臨床効果があることについてのエビデンス(科学的証拠)は何か
4) ジェネリック医薬品の使用を増やす上での障害は何か
5) ジェネリック医薬品の使用を増やすことを通じて医療費の低減を促進する上でどのような戦略が用いうるか

の5つである。

 レビューの結果、これらの質問に対応して次のことが判明した。

1) ジェネリック医薬品があるにかかわらず、先発医薬品の処方が慢性疾患をはじめ多く行われている。

2) 患者の自己負担が多いと使用継続に支障があり、ジェネリック医薬品使用が使用継続に役立つとのエビデンスがある。

3) 規制庁(FDA)は、対応する先発医薬品と生物学的同等性が変わらないことを確認してジェネリック医薬品を承認している。生物学的同等性は、有効成分の最高血中濃度とそれに達するまでの時間、ないしは血中濃度曲線下の面積に基づき確立されている。抗血液凝固剤や抗不整脈剤などでは臨床効果に関しても同等であるとのエビデンスが得られており、査読専門誌に論文発表されている。

4) 医師や患者が高価な先発医薬品を用いるのは、安価な選択肢(ジェネリック医薬品)の有効性安全性を疑っているからである。これが最大の障害である。誤解を解くために、確立されている医薬品承認の過程とは別に、ジェネリック医薬品と先発医薬品との有効性と安全性を比較する臨床的な同等性試験を、広範に用いられている降圧剤や甲状腺ホルモンのような、特に必要と思われる薬剤群について行う必要があるであろう。

5) ジェネリック医薬品の使用を促進するための多くの戦略が発表されている。いくつかの戦略は有望にみえるが、全体としてこれらの戦略を支えるエビデンスのデータが限られており、さらなる研究が必要である。

) プロバイダー(行政など)の戦略
 医師のジェネリック医薬品使用を促進する処方指針(フォーミュラリー)、医師継続教育(企業から独立した医薬品情報を提供するアカデミック・ディテーリングなど)、患者のジェネリック医薬品使用を促進するクーポン券(vouchers)、医師に対する企業の「贈り物」を禁止するなどの戦略がある。

) 患者の戦略
ジェネリック医薬品への患者の誤解を解くための、ジェネリック医薬品とは何か、生物学的同等性などについての的を絞った教育が重要である。患者は一度ジェネリック医薬品を用いる経験をするとそれからはジェネリック医薬品を選択するようになることが多い。

) 支払者と保険に基づいた戦略
 支払者と政策作成者はこれまでもジェネリック医薬品使用に長く努力してきた。高価な医薬品使用に懲罰的な金銭的負担を課すなどはその代表的なものである。患者や薬剤師の承諾がなくとも先発医薬品をジェネリック医薬品に換えられるようにする施策は、すでに多くの州で採用されているが、医療の質を落とすことなくジェネリック医薬品使用を促進し得る。

最善の実地診療アドバイス
 医師は高価な先発医薬品に換えて、それが可能ならばジェネリック医薬品を処方すべきである。
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 このジェネリック医薬品処方推進のガイドラインをまとめたAmerican College of Physicians(ACP)は、1915年に創立され、内科学専門誌Annals of Internal Medicineを月2回発行している老舗の団体である。

 ACPのロゴマークには“Leading Internal Medicine, Improving Lives”(内科学・内科医療をリードする、生活を改善する)と書かれている。日本語では「米国内科医師会」とも「米国内科(医)学会」とも訳されるように、職能と学術が一体となった団体である。

 一方、日本ではそのようにはなっていない。医師会は医師会、学会は学会で実質的に分離している。このことが、今回のようなガイドラインが日本では出されない一因でもあるのだろう。

 しかし、医療費がひっ迫している中で、また医師のプロフェッショナリズムの観点からも、日本でも本来必要なガイドラインであることは明らかと思われる。 (T)