注目情報

  1. ホーム
  2. 注目情報

規制緩和をして医薬品の承認・アクセスを急ぐと結局コストが高くつく

2016-04-19

(キーワード: 承認基準、規制緩和、米国21世紀治療法と関連政策、高コスト、グローバルな連帯)

 医薬品の承認基準の緩和を求める製薬企業と議会の動きがグローバルに強まっている。米国の21世紀治療法案(※1)とその関連政策はその顕著な例である。

 21世紀治療法案は、アンメットメディカルニーズといわれるいまなお治療法のない希少疾患治療薬の開発などを強力に進めるために、臨床試験や審査の合理化・短縮化をはかり、医薬品規制の「現代化」を意図する共和民主両党議員提案の法案である。下院を通過して、上院で審議されている。
 
 FDAの審査部門に20年以上在籍の経歴をもち、保健政策問題について広く提言している、公衆衛生NPOシンクタンクである全米ヘルスリサーチセンター長のDiana M Zuckerman氏と同センターのアルツハイマー病の専門家などが、BMJ誌電子版2015年11月23日号で、これらの規制緩和が進めば結局コストが高くつくと警告している。
 
 要旨を紹介する。
-----------------------------------------
 米国の21世紀治療法は、支持者たちによって、新たな治療を促進するための革新的な試みとして描かれている。しかし、この法律は本当に新たな治療を促進するのだろうか。

 アルツハイマー病はしばしば破壊的な疾患の例として引用される。われわれは、現在のFDAの承認基準のもとでは承認を拒否されたが、規制緩和を推進する21世紀治療法が成立すれば承認される可能性のある3つのアルツハイマー病治療剤(Semagacestat, Bapineuzumab, Latrepidine)について、予想される害とコストを検討した。

 これらの薬剤が、21世紀治療法が推奨しているように第響螢如璽燭亡陲鼎い鴇鞠Г気譟∋堡慮紊梁茘形蟷邯海罵効性の証明に失敗するまで販売された場合、それまでに4年が経過する。これらの医薬品のいずれかが、代替バイオマーカーで承認されたコレステロール低下剤アトルバスタチン(リピトール)の実例を準用した控えめな試算により18%のシェアを獲得するとした場合、年に23万4千人の患者に処方されると推定される。そして、第形蟷邯海侶覯未ら1万9000人が副作用として皮膚がんを発症する。新薬の薬価は開発費用によってではなく、競争薬の市場価格に基づいて決められるため高価で、結局、市販後試験の終了までに70億ドル(約8500億円)のコストが費やされるのである。

 最近のFDAの承認基準は、議会と企業からの圧力で緩和されつつあった。FDAは、しばしば臨床上のメリットではなく、バイオマーカーでの成績に基づき医薬品を承認している。例えば、がん治療剤は、腫瘍縮小ないし無増悪生存期間に基づき承認されるが、市販後試験で全生存延長のベネフィットがみられない例がある。また、骨粗しょう症治療剤は、健康に影響する臨床的に診断された骨折でなく、骨密度などに基づいて承認されている。

 21世紀治療法と関連法制は、このFDAの基準をより一層緩和することになる。そして我々が示したように、患者は無効で害の可能性のある医薬品を服用し、結局多くの医療費が浪費されるのである。
-----------------------------------------
 承認基準規制緩和の進行は米国だけでなくグローバルな動きである。高齢化などで医療費の高騰が問題となっているなかで、さらに医療費の高騰を招くこれらの動きに対し、患者・市民の立場からのグローバルに連帯した取り組みが求められている。 (T)