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米国でサンシャイン法による医師への支払いデータ公開がスタート

2015-02-19

(キーワード: 製薬企業、医師への支払い、情報公開、サンシャイン法)

 医療における利益相反管理の第一歩は公開であると言われる。米国はその第一歩を力強く踏み出した。
 米国で医薬品・医療機器産業から医師への支払いを「太陽の光のもとで明らかにしよう」との意味を込めて「サンシャイン法(Sunshine Act)」と名付けられた法律が施行されたことは、これまで本サイトでも伝えてきた。
 この法律に基づく情報公開が2014年9月30日から、米国厚生省の組織であるCMS=Center for Medicare & Medicaid servies (公的医療保険を管轄する部署)のウエブサイトでいよいよ始まった。
 当日のCMSのプレスリリースを以下に要約する。

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= CMSが製薬・医療機器会社から医師・医師教育病院への支払いの公開を開始 =

 ヘルスケア(医療)における透明性をより高めるための努力の一環として、CMSでは、ヘルスケア産業と医師・医師教育病院との金銭的関係を、国民がより理解しやすいよう支払い公開データ(Open Payments data)の第一弾を公表した。

 リストには、2013年の後半5か月間(8月〜12月)に製薬会社や医療機器会社から医師と医師教育病院(訳者注・日本での医学部付属病院にあたる)に支払われたコンサルタント料、研究助成、旅費、贈り物等が法律に基づいて公開されている。データには54万6000人の医師と1360の医師教育病院に対する、440万件総額約35億ドルの支払いの詳細が掲載されている。

 製薬・医療機器産業の各社はこの夏にCMSに支払データを提出。それを受けてCMSが、それぞれの医師ごと、医師教育病院ごとに支払金額をまとめた。
 まとめられたデータは医師や医師教育病院側に示され、それが不正確と考えらえる場合には異議を唱える機会も与えられた。精査したデータは2015年に公開予定。

 詳しくは以下のサイトを訪れてほしい。
www.cms.gov/openpayments/

 実際に検索できるのはこの画面です。
https://openpaymentsdata.cms.gov/

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 食事の提供などを含む10ドル以上の支払いはすべて公開対象となる。それ以下でも年間100ドル以上になる場合は公開される。

 検索は極めて簡単である。
 上記のウエブサイトの検索ページに行き、試しに米国男性の代表的な名前であるJohn Smithと入力すると、33人の医師名がヒット、フルネームと、専門分野、住所が一覧表で表示される。そこで医師名をクリックすると、この医師に支払いをした会社名、支払い内容、日付、金額などのリストが一覧で表示される。
 さらに、その会社名をクリックすると、今度はその会社が支払ったすべてのデータ(支払先、支払い内容、日付、金額)が一覧表の形で表示されるのである。画面のコピーもダウンロードも自由にできる。

 日本でも2013年夏以降、日本製薬工業協会(製薬協)に所属する各社が、いわゆる「透明性ガイドライン」に基づく自主的公開を始めているが、 会社ごとに公表時期も公表方法もばらばらで、画面のコピーやデータのダウンロードができないものばかりである。中には来社閲覧方式といって、会社側が指定した場所への訪問を求めた上で、限られた時間内の閲覧だけを認めるという対応をとっている会社さえある。
 さらに日本の「透明性ガイドライン」では、個人名まで公表されているのは2013年度以降の原稿料・講演料、コンサルタント料等の支払いだけで、飲食の接待などは個別には公表されず、各社とも年間トータルの支払額を公表しているだけである。
 また米国の情報公開が、法律に基づくものであり不申告や虚偽申告には厳しい罰則があるのに対して、日本の情報開示は自主的なものであり、仮に不申告や虚偽申告があってもなんらペナルティはない。

 日本においても、医療における利益相反管理のための新たな法整備が望まれるところであるが、この問題について検討している厚生労働省の「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」は、2014年11月に公表した報告書案で、利益相反管理に関しては業界と医学界の自主的努力に期待するとして、法制化を見送る方針を示している。(K)


注)米国研究製薬工業協会(PhRMA)の公式ウエブページの解説には「米国のサンシャイン条項には法的な強制力があり、報告の漏れや意図的な隠ぺいに対して、最大年間 115 万ドルの罰金が科せられる可能性があります。一方、日本の透明性ガイドラインには法的な強制力はありません。」と書かれている。さらに同解説には「サンシャイン条項では、金銭以外の項目(知的財産にかかわる権利や物品など)も対象となっており、この点で透明性ガイドラインよりも報告対象が広くなっています。」と書かれている。

関連資料・リンク等