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欧州医薬品庁が医薬品規制に関わる専門家・スタッフについて利益相反リスクレベルを公表

2012-07-19

(キーワード: 医薬品規制に関わる専門家、利益相反レベル、欧州医薬品庁)

 医薬品の承認や市販後の安全監視などについて行政当局が意見を求める専門家は、ほとんどの場合製薬企業との接触があり、製薬企業との関係が公平さに問題を生じる可能性がある。欧州医薬品庁(EMA、当時はEMEAと呼称)は2006年これら専門家の製薬企業との利益相反関係をリスクレベルで分類し、そのリスクレベルによって医薬品庁の活動にどのように関与できるかを決めるシステムを発足させた(※1)。

 2010年フランスで危険な医薬品メディアトールの回収が、医薬品庁(Afssaps)と製薬企業との利益相反で大幅に遅れ、多数の被害者を出して社会問題となり(※2)、利益相反問題が注目をあびた。これを契機に欧州医薬品庁は、医薬品庁のスタッフ自体の利益相反も含め、利益相反に対する取り組みを強めていることを、スクリップ誌2012年3月9日号が伝えている。以下はその要旨である。
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 欧州医薬品庁は、医薬品規制にかかわる専門家の企業との関係の申告に基づき、すべての専門家のリスクレベルを公表した。また、欧州医薬品庁の管理スタッフ自身のそれらのプロフィル(輪郭)についても公表した。新たなスタッフは仕事にかかる前にそれらの葛藤の問題を除かねばならない。医薬品の承認や市販後監視の分野での情報公開の重要性は、フランスのメディアトール事件が暴露され、その結果フランスの規制庁(Afssaps)の改革が行われたここ数年に高まった。

 2011年11月に専門家の利害関係の申告を含む欧州医薬品庁のデータベースが船出した。いまやデータベースは完成し、3500名の専門家がリスクレベルを位置づけられた。リスクレベルは3つに分類され、レベル1は利害関係がなく、レベル2は間接の、そしてレベル3は直接の利害関係を有する。リスクレベルはここ5年間に起こった利害関係に基づき、一定の基準で決定される。ほとんどはレベル1であるが、レベル3がレベル2よりも多い。例えば英国医薬品庁関係でリストされた専門家270人では、レベル3が36人いた。科学委員会のような意思決定機関のメンバーに求められる厳しさは、特別専門家グループのような諮問委員会メンバーに求められるものより大きい。

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 医薬品規制に関わる専門家に対する製薬企業との利益相反についての規制は、米国ではFDA(食品医薬品庁)の規制が弱められる方向にあるが、欧州ではフランスのメディアトール事件の影響もあり、強化されている。

 日本においては、「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」研究班におけるタミフルの輸入販売元との利益相反問題を機に、利益相反ルールは策定されたものの、真にバイアスが排除され、実効性が保たれたものとなっているかは疑問である。

 製薬企業との利益相反について規制はされるようになったが、抜け道があったり、学会全体の利益相反の陰に隠れるなど、十分なものとなっていない。改善の取り組みを強めていく必要がある。 (T)
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