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製薬企業による資金援助が患者団体の独立性に及ぼす影響

2012-02-02

(キーワード: 患者団体、独立性、製薬企業、資金援助、利益相反)

 医薬品に関連する政策への患者参加の必要性が言われている。その際に製薬企業が資金援助をすることで患者団体を取り込み、患者団体が製薬企業の意向を代弁することがないかとの危惧もなされている。ここに紹介するのは、フランスの独立系医薬情報誌プレスクリール・インターナショナル2011年12月号の「製薬企業と患者団体: 資金援助の影響」の記事の要約である。概略はプレスクリールの英文ウェブサイトでも見られる(※1)。
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他の欧州諸国でもそうだが、フランスの製薬企業は処方せん薬の情報を、患者に直接に供給できることを求めてロビー活動を行っている。そしてその最善の代弁者は彼らが資金援助している患者団体である。

 ヘルスケアと医薬品の合理的使用を促進する活動を行っている国際ネットワークHAI(ヘルスアクション・インターナショナル)欧州は、欧州医薬品庁(EMA)が認定している患者・消費者団体についての調査を行った。その結果は、製薬会社が患者に情報を直接提供する問題についてこれら患者・消費者団体によって表明された意見と、それらの団体が製薬企業から受けている資金援助との間に相関関係がみられた。

 医薬品情報を企業が提供できる法制化に、資金援助を受けている患者団体はすべて賛成、受けていない患者団体はすべて反対だった。頼んでいないのに広範にまき散らされる情報、すなわちテレビ、新聞など広範なメディアによる情報には、企業から資金援助を受けているいないにかかわらず、ほとんどの団体が反対だった。しかし、公衆が求める情報については意見が分かれ、資金援助を受けていない団体の大部分は反対だったが、資金援助を受けている団体の大部分は賛成であった。

 このHAIによる調査結果は、患者を代表する団体が製薬企業から経済的に独立していることが、患者の最善の利益にとって重要であることを証明している。
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日本においても、患者団体の関係者が医薬品政策の審議・決定に参加する機会が増えている。審議会等に参加する委員個人については、審議会等の定める利益相反等の規定による規制を受けるが、患者団体自体は、そのような規制を受けていないのが現状である。が、これら患者団体の製薬企業との利益相反が明確に公表されるとともに、規制されるべきである。  (T)
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