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医薬品処方は慎重に −新参の薬に飛びつく前に考慮したい6つの原則

2011-11-22

(キーワード: Conservative Prescribing(慎重な処方)、時間にためされた処方の価値)

 米国医師会出版局が発行する内科学アーカイブ誌2011年9月12日号に「慎重な処方の原則」が掲載された。同誌の電子版(Online First)には2011年6月13日に掲載されている。

 著者はハーバード医科大学患者安全研究診療センターのゴードン・シフ氏ほか医学薬学分野の6氏である。記事には同誌編集部による“Less is More”のフレーズが最初に付されている。評価の定まった医薬品を必要なだけ使用することを基本にしよう、シンプルを心がけてというメッセージであろう。製薬企業MRや製薬企業との深い経済的関係が利益相反がある「エキスパート」(専門医)が勧める新参の薬を使用する前に、考慮したい6つの原則について記している。日本の医師会・内科関係の学会が発行する医学誌にこのような呼びかけの記事が載ることはなく注目される。以下に要旨を紹介する。
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 慎重で賢明な処方は安全で適切な医薬品使用の前提条件である。科学的根拠と広範に処方された医薬品で起こった安全性問題の研究から得られた教訓から、われわれは注意深く慎重な処方の原則について提言する。これらの原則は医師に次の6つを考慮するよう勧める。

1) 医薬品ばかりに目を向けない
  医薬品以外のカウンセリング・療法、生活習慣の確立など、医薬品使用の前に行うべきことがあるのでないか、広い視野から考慮する。症状に対して直ちに医薬品を用いる前に、症状の原因に対する対処を考える。治療ばかりに焦点をあてるのでなく、予防を重視する。

2) 戦略的によく練った医薬品処方を実践する
  急がない処方を延期する。根拠ない医薬品の変更を避ける。しばしばいわれるようになった個別化医療に根拠や合理性があるのかよく見極める。根拠が証明されていない医薬品の使用には極めて慎重に。同時に複数の新薬を用いずひとつずつ使用する。

3) 副作用には十分な注意と監視を
  随伴症状が医薬品に起因するのでないかと常に疑え。起こり得る副作用についてあらかじめ患者に注意を促す。薬物中止で起こる症状に十分な注意を払え。

4) 新薬には用心と批判的な目で対処
  MRが持ってくる、またエキスパート(専門医)がもたらす情報にバイアスがないか批判的にみる。発売後に新たな副作用が明らかになるから,特に優れた新薬は別として発売後何年かは使用を控えるのが賢明である。効果が患者にとって重要なアウトカムで証明されているのかに注意する。代替エンドポイントでの効果には批判的に。適応外使用には十分慎重に。分子標的薬などの優美な分子薬理学的説明に惑わされない。臨床結果の報告に偏りがあるのでないかに注意を。

5) 患者と十分協議して
  患者がこの薬を使ってくれと言っても安易に受けない。処方に新たな医薬品を追加するときは患者が処方薬をちゃんと服用しているのかに十分注意を。患者の薬歴に注意してかって効かなかった薬や副作用があった薬を重ねて処方しない。不必要な医薬品処方を整理する。

6) 長期の医薬品使用の結果に注意を払う
  医薬品の短期使用のベネフィットだけでなく、長期使用の効果やリスクに注意する。患者や臨床検査のモニタリング結果により、処方変更などを適切に行うチャンスを逃がさない。
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                               (T)

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