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フランスが薬害スキャンダルを踏まえ医薬品行政改革についての意見聴取を実施、夏には法制化

2011-05-20

(キーワード: フランス、Mediator薬害、医薬品行政改革、法制化)

 フランス保健省は、500名もの死者を出した食欲抑制剤ベンフルオレックス(商品名Mediator)が30年以上にもわたって処方され続けていたことから、これまでの医薬品規制を徹底点検し見直すために、国をあげての医薬品行政改革についてのコンサルテーション(意見聴取)に着手した。夏には法制化が予定されている。BMJ誌電子版2011年3月23日号が転換期にあるフランスの動きを「フランスが医薬品規制システムの徹底点検を提案」のタイトルで伝えているので要旨を紹介する。
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 フランス保健省は、同国の医薬品庁が食欲抑制剤ベンフルオレックス(商品名: Mediator)についての非常に重大な報告を行った後で、処方せん薬の規制を徹底点検する国をあげてのコンサルテーションを開始した。保健省は、2009年に市場から撤去されるまで約500人の死亡の原因となったとされる医薬品がどうして30年以上も市場にあり続けたかについて昨年調査を開始した。コンサルテーションは5月末まで実施され、異なった利害関係者を代表する6つの作業グループを含んでいる。参加者は医薬品評価・モニタリング・医薬品販促についての提言をするよう期待されている。
 時を同じくして独立医薬情報誌プレスクリールは、Mediator薬害(public health disaster)が最近の規制システムが不適切なことを例証しているとして、医薬品政策を患者の利益と公衆衛生を優先するものに転換するよう求め、9つの領域で57の提言を行っている。第一に承認基準の厳格化を求め、既存剤との比較研究に公的資金を投じるべきとしている。また、治療的な付加価値をもたらしたものを承認するようEU(欧州連合)の法律を改訂すべきと示唆している。その他、情報公開の推進、積極的な医薬品監視システムの構築、医療専門家がオンラインで簡便に副作用を報告できること、生涯教育への公的資金などを提言している。
 3800万人をカバーする相互保険会社の業界団体(Mutualite Francaise)がプレスクリールと同様の項目について別個に同様の提言をしている。プレスクリール誌の提言は、独立継続医師教育推進連合(Formindep)からも支持されている。しかし同連合はコンサルテーションには参加しないと表明した。同連合はコンサルテーションが透明性を欠き、製薬企業の利益を代表しすぎると非難している。3月13日、ザビエル・ベルトラン保健大臣はコンサルテーションの議論は記録され公開されると述べ、製薬企業の利益を代表しすぎることはないと否定した。
 保健大臣はコンサルテーションの結果とMediator事件の検証に立って夏までに新法を導入すると述べた。新法は3月16日に提出されている2人の指導的な医学教員(Philippe EvenとBernard Deblet)が3月16日に大統領に提出しているレポートも考慮にいれる。2人はフランスの医薬品庁(Afssaps)を厳しく批判し、医薬品評価と医薬品監視の2つのそれぞれ自律した機能を有する官庁の仕事をコーディネート(統合)する新たな医薬品庁の創立を提言している。また、医薬品規制の改善のために20-40人の名声のある外部専門家を3年間にわたって在宅勤務で雇用するよう提言している。
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 米国においては、抗炎症剤「バイオックス」(一般名:ロフェコキシブ)による大規模な薬害などにより、FDA再生法が成立し医薬品の安全管理など医薬品行政が改革された。日本においてもスモン、薬害エイズ、薬害ヤコブなどの繰り返される薬害が安全管理など医薬品行政の整備をもたらしてきている。最近では、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の最終提言で、薬害の発生及び拡大を未然に防止するため、医薬品行政に関わる行政機関の監視及び評価を行い、適切な措置を取るよう提言等を行う「第三者組織」の設置が必要であるとした。今回のフランスのMediator薬害による医薬品行政の改革については、別個の注目情報で紹介している(※1)。今後のフランスの動きに注目したい。   (T)