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米国ニューヨーク州当局がパキシルの情報操作でGSK社を提訴

2004-07-12

 [キーワード: パキシル(パロキセチン)、GSK(グラクソ・スミスクライン)社、情報操作(隠匿)、ニューヨーク州当局、スピッツァー検事総長、提訴]

 最近、米国・英国は、パキシル(パロキセチン)などのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)抗うつ剤が、小児や思春期の若者に効果がなく、自殺の危険を増加させるリスクをもつので、投与しないよう呼びかけました。

 これに関連して、6月2日、米国ニューヨーク州当局(スピッツァー検事総長)が、パキシル(パロキセチン)を販売する英国系製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)社に対し、情報操作(隠匿)を行い医師の正しい判断をできなくして、パキシル(パロキセチン)を小児や思春期の若者に処方させることによって、ニューヨーク州で不当に得た利益を差し出すよう、市民訴訟を提訴しました。

 これらによれば、グラクソ・スミスクラインは、少なくとも5つの研究結果を保持していました。しかし、論文発表したのは、そのうちの1つだけであり、他のデータは論文発表しないにとどまらず、データの存在を隠匿しました。発表したデータは小児のうつ病に効いているかもしれないという成績でした。発表しなかったものでは、効果がないばかりか、ティーンエージャーの自殺を増加させるリスクが示されていました。

 そして、グラクソ・スミスクラインは、パキシルが思春期のうつ病 にすぐれた有効性と安全性があるという宣伝を医師にアグレッシブに行いました。そうした販促方法について、同社が自社のMR(医薬品情報担当者)に指示した文書などに基づいて告発しています。
    
 グラクソ・スミスクラインは、本国の英国やカナダでは、パキシルが小児や思春期の若者たちに有効性をもたず、自殺のリスクを増加させることを認めた後も、米国の医師たちには効果・安全性があるとして、引き続き処方させようと画策しています。

 その結果、2002年に全米で200万を越えるパキシルの処方が、小児と思春期の若者に出され、グラクソ・スミスクライン社に5500万ドルをもたらしましたが、虚偽の情報で得た利益なので、ニューヨーク州の分を差出しなさいというわけです。

 ピンクシート誌2004年6月7日号が、この訴訟を記事にしていますが、今回のような都合の悪い研究結果を隠し、利益をあげたことに対する訴訟は米国では前例があるとのことです。ピンクシート誌はその目立った例として、甲状腺ホルモン製剤シンスロイドの例をあげています。同剤を製造・販売していたアボット/クノール社は、情報隠匿の代償として、結局1億4千万ドル以上を支払わねぱならなかったそうです。

 このピンクシート誌の記事は、FDA(食品医薬品局)に関して、次の胡椒の利いた補足説明を加えています。「FDAは、抗うつ剤の安全性ラベリング(表示)をアップデートするアクションを最近とったが、販売企業による販促活動とデータ報告については何のアクションもとっていない。この点では実際のところ、FDAの安全性担当審査官たちのくだした安全性への懸念が上級審査官たちによって握りつぶされたのではないかと疑われ、現在、米議会による調査が進行している」。
   (T)