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抗てんかん薬の不合理な世界 〜これは抗てんかん薬だけの話ではないが〜

2009-08-20

(キーワード:抗てんかん薬、臨床試験、難治性てんかん、標準治療薬)
 
 新薬承認のための臨床試験は既存の標準治療薬と比較しその新薬の臨床的必要性を検証しなければならない。プラセボとの比較試験が認められるのは標準治療薬が存在しない場合のみである。
 てんかん治療にはデパケン(バルプロ酸ナトリウム)やテグレトール(カルバマゼピン)等の標準治療薬があるが、標準治療薬でコントロールが十分できない難治性てんかんに対しては標準治療薬を含めた併用療法が行われるのが一般的であるため、難治性てんかんに対する新薬の臨床試験は既存の治療薬への上乗せ効果をプラセボと比較して評価されている。
 しかし、プラセボとの上乗せ効果で有効性が認められた難治性てんかんの薬剤があるのであれば、その薬剤と直接上乗せ効果を比較し検証されるべきではないだろうか。以下は、英国の医薬品情報誌DTB( Drugs and Therapeutics Bulletin) 2009年5月号に掲載された論説、「てんかん薬の不合理な世界」(The mad world of epilepsy drugs)の要約である。          
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 この20年間で難治性てんかんの治療薬は10以上も承認されている。難治性てんかんの新薬lacosamide(Vimpat)は間もなく発売になるし、さらに多くの新薬がすぐに入手可能となりそうである。
しかし、難治性てんかんの新しい治療を評価するやり方はますます疑問のあるものとなっている。それらの新薬は既存のてんかん治療薬への上乗せ効果を、既存の治療薬との比較ではなくプラセボと比較され、プラセボに優るものとして販売承認されているのだ。
 患者は一般的に16週間フォローされ、発作の減少率を主要な効果として評価される。しかしながら、その評価結果は毎日の臨床の意思決定にはほとんど役にたたない。比較は他の治療選択肢とではなくプラセボとなのであるし、短期間の発作回数減少は長期慢性症状においての結果を評価するには不十分である。これらの研究の体系的なレビューは効果と認容性の証拠を補強するけれども、一方の薬が別のものより優れていることを証明することができないのである。
本当は、既存の標準治療薬と発作回数の減少(理想的にはけいれんからの解放)だけでなく、生活の質(quality of life)・費用対効果を含む他の切実な成果を比較した長期の実用的な臨床試験が必要なのだ。現在多数の難治性てんかん発作の薬が入手可能なのに、プラセボとの比較で評価し薬を開発し続けることは許すべきではない。
規制当局や製薬企業は臨床的な決定をくだす際に役立つ臨床試験に着手する責務があり、評価方法をを変えねばならない。公共の資金で臨床試験を行う独立した研究者達もそうしたエビデンスを提供する責務がある。これらの問題に取り組まなければ、薬の選択肢は増えても実際に何を選択するかについてのエビデンスがほとんど無いということになる。その結果、処方する究極の決定因子は信頼できるデータなどではなく、製薬会社の販促活動の成果ということになってしまう。
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 日本でもこの間、新規の難治性てんかん治療薬として、2006年にガバペン(ガバペンチン)、2007年にトピナ(トピラマート)、2008年にラミクタール(ラモトリギン)が発売されている。いずれも既存の治療薬への上乗せ効果をプラセボと比較した試験で承認されている。難治性疾患の治療薬の臨床試験のありかたは大いに議論されるべきである。 (GM)