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「キーオピニオンリーダーとは独立した専門家か、はたまた偽装した企業のMRか」

2008-08-29

(キーワード:オピニオンリーダー、MR、医師と製薬企業、利益相反、偽装)

 この刺激的なタイトルは英国医学雑誌(BMJ誌)2008年6月21日号の記事である(※1)。
 客員編集者のRay Monyhan氏は、企業に雇われている医学の専門領域のオピニオンリーダーとは何者なのか各方面にインタビューを行った。
 一般の医師に対して大きな影響力を持っているオピニオンリーダーが、実はマーケッティングや、とりわけ新薬の販売促進のために企業に雇われている。米国の大手製薬企業で20年近いMRのキャリアーを持ち何度かトップセールスパースンにもなったというKim Elliot氏はインタビューに答えてずばりこう言う「オピニオンリーダーは、我々にとってはセールスマン。我々は彼らの講演の前後で(自社製品の)処方数の変化をチェックして彼らに投資した分の見返りを計算します」。企業が支払うオピニオンリーダーへの金は、他の医師に処方を促すための賄賂ではないか、とRay Monyhan氏は製薬工業会理事に対して質問を投げかけている。
 このインタビューを読むと、オピニオンリーダーと言われる専門家の話しを聞く際には、企業との利益相反に注意してもしすぎることはないと気付くだろう。以下に、要約する。
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 医学の世界では「キーオピニオンリーダー」と言えば、製薬企業の販売促進を援助するために雇われている上級医師をさす言葉であるが、ジョージ・オーウエル的なニュアンスが多少含まれている(註1)。別名「思想リーダー(thought leader )」とも呼ばれる。
 英国製薬工業会の医学理事であるRichard Tiner氏は、BMJ誌の率直なインタビューに対して、オピニオンリーダーが企業にとって重要な役目を果たしていることを認めている。
 彼らは、マーケティング、教育、研究戦略などの複合的な部分を受け持ち「彼らが金を受け取る時、彼らは企業に雇用されたという意味になる」と彼は言い、「彼らが話すことが企業基準に合っているかどうか吟味することを意味する」と付け加えた。
 「キーオピニオンリーダー」という役割は、かなりの稼ぎになることが以下でわかる。

1時間あたりの助言料400ドル(約4.3万円)(情報原はCutting Edge)
1回の講演料3000ドル(約32万円)(情報原はMarkwire)
臨床試験参画料1時間あたり200ポンド(約4.3万円)(情報原は英国医師会)
  
 これは、グローバルな現象である。企業がキーオピニオンリーダーを雇うことは世界的に行われているが、Pharmaceutical Marketing誌 はこの「商売のしかけ(Trick of the trade)」について次のように書いている。企業のマーケティングスタッフは、彼らを「製品擁護者」に仕上げるようにせき立てられるが、まずは製品を保証してくれる医師を見つけなければならない。「影響力の低いところにいる人」を援助して「彼らのイメージをアップさせオピニオンリーダーに仕上げる」。さらに、もう一つの「商売のしかけ」によれば、彼らに関するデータベースを作成、企業に投資への見返りを示しオピニオンリーダーの管理法を提供する会社さえある。
 こういった仕組みは誰の利益になるのか。ハーバード大学で専門家と企業の関係を研究しているDavid Blumenthal氏は、彼らは二重の利益を得るが、これはより大きな社会の利益にはならないしこういう医師に診てもらっている患者にも利益にならない、と言う。彼の声は小さいが、No Free Lunch and Healthy Skepticism(昼食お断りと健全な懐疑主義)のようなグループを擁護し世界的な声となりつつある。  (S)
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註1:ジョージ・オーウエルはイギリスの作家。大きな権力によって監視されコントロールされた人間の思考や行動様式を描いたディストピア(反ユートピア)小説「1984年」は有名。