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米国の社会事業団が医師処方に対する製薬企業の影響排除に取り組む

2007-06-20

(キーワード 販売促進活動 処方プロジェクト 利益相反)

 製薬企業がその豊富な資金力によって、あの手この手で医薬品の販売促進活動を行っていることについては、最近ではマーシャ・エンジェルが「ビッグ・ファーマ」(栗原千絵子・斉尾武郎=共監訳・篠原出版新社、2005年)でその実態を厳しく指摘し批判しているが、最近、米国では、「利益相反」の規制を強化する社会的な活動が様々な形で進められている。以下に紹介する処方プロジェクトもその一つである。日本の医学関連学会では、「ランチョンセミナー」という形の製薬企業の販売促進活動が通常のこととなっているが、そうしたことも見直すことが必要であろう。

ランセット2007年3月7日号(著者=Michael McCarthy)によれば、米国の社会事業団であるピウ慈善トラストは、医師の医薬品処方行動に及ぼす製薬企業の販売促進活動の影響力を減じるキャンペーンに600万ドルを提供した。このキャンペーンは処方プロジェクトと呼ばれ、医療消費者団体コミュニティ・カタリストと、医療における利益相反問題に長く取り組んできたコロンビア大学のプロジェクトIMAPが共同で行う。処方プロジェクトは、製薬企業が医薬品を医師や研修医・医学生に売り込むために莫大な費用を投じて食事や金品等の提供などを含む販売促進を禁じたり厳しく制限するガイドラインの実施を促進させる方針である。最近、エール大学やスタンフォード大学を含むいくつかのアカデミックな医学センターや医療提供者にそのようなガイドラインを採用する動きが出ている。これに対しハーバード医大のThomas Stossel医師は、プロジェクトが研究者と製薬企業の自由な意見交換と協同を阻害するなどと批判している。しかし、IMAPのDavid Rothman代表は、医学界と製薬企業の馴れ合いは患者の信用を落とすとして反論している。 (K)

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