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規制当局は抗うつ剤SSRIによる自殺リスクのデータに適切に対処せず被害を増大させたとヒーリー教授が批判の論文

2006-10-24

(キーワード: 抗うつ剤SSRI、自殺リスク増大、規制当局による警告の遅延、
デーヴィッド・ヒーリー教授)

 COX-2阻害剤と抗うつ剤SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)による大規模な薬害が、世界的に医薬品に対する社会の信頼を傷つけている。著名な精神科医でもある英国のデーヴィッド・ヒーリー教授が、米国FDA(食品医薬品局)と英国MHRA(医薬品規制庁)による抗うつ剤SSRIの承認と規制の過程を精査し、誤りがあったのでないか、警告が遅れたのでないか、被害は避けられたのでないかと批判する論文を英国医学誌BMJ誌(333,92,2006)に発表しているので、要旨を紹介する。

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 GSK(グラクソスミスクライン)社は最近、医師に対する手紙で、SSRIパロキセチン(商品名パキシル)を服用した成人の自殺リスクが6倍に増加することを指摘した。多くの人々は製薬企業が医薬品の有害副作用を明らかにしたがらないとは感じていても、規制当局はそれらを明らかにし遅れることなく対処してくれると期待している。そこで当局によるこれまでの規制過程を精査した。

 1990年2月に、承認を受けて間もないSSRIフルオキセチン(商品名プロザック、日本では未発売)がうつ病患者で自殺の原因となるのでないかと指摘した論文が注目された。FDAは1991年9月、フルオキセチンと自殺の問題で諮問委員会を開催している。小児についても1990年代半ばに行われた臨床試験で、自殺リスクが2.19倍になるとニューイングランド医学雑誌に報告されている。しかし、成人の自殺リスクの増大が警告されたのは実際にはこの2006年5月であった。

 1987年以降に承認されたSSRIはすべて、FDAに提出されたデータではプラセボと比較して自殺が多かった。しかし、この単純でそして決定的な重要性をもつデータは当局により適切な扱いがされなかった。

 FDAとMHRAに提出されたSSRIの成人データから、自殺リスクはプラセボの2.6倍と2倍よりもさらに高いことが推定される。個々の臨床試験の症例数は少なくても、これら規制当局はSSRIのクラス効果(SSRIが共通して持っている有害副作用など)を解析する絶好の位置にいるにかかわらず、そうしたことは殆どなされなかった。

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 当薬害オンブズパースン会議は、2004年11月「暴走するクスリ 今、抗うつ剤で何が起きているのか?」のセミナーを開催するなど、抗うつ剤SSRIの問題に取り組んできている。今年2006年12月3日(日)には薬害エイズ和解10周年記念企画「くりかえされる薬害の原因は何か」でデーヴィッド・ヒーリー教授に記念講演いただく予定である(13時、ベルサール九段ホール、同時通訳つき、東京HIV訴訟弁護団・医薬品治療研究会・NPO法人医薬ビジランスセンター共催)(※1)。 (T)