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JAMA誌編集長が執筆者の製薬企業との関係開示の重要性を改めて強調

2006-10-23

(JAMA誌編集長、著者の利益相反、金銭の医学への影響)

 日本では取り組みが非常に遅れているが、欧米の医学雑誌は、雑誌に掲載された論文などの内容に執筆者の製薬企業との関係が影響を与えることから、執筆者の製薬企業との金銭関係(利益相反関係)を情報公開することに、以前から取り組んでいる。米国医師会雑誌(
JAMA)2006年8月23/30日合併号(8月7日オンライン版に先行掲載)で、同誌のキャサリン・D・デアンジェリス編集長が「金銭の医科学への影響」と題する論説を掲載し、執筆者の製薬企業との関係開示の重要性を改めて強調している。以下はその要旨である。

    ここ何年かに金銭が医科学に及ぼす倫理に反した影響がより明白になっ
    てきている。

    査読を必要とする医学雑誌の編集者は、患者の利益を常に第一に重視す
    べきことはいうまでもない。掲載された記事は患者ケアに影響を与える
し、また与えねばならない。それゆえに、われわれが掲載したものは倫
理的に適切で、信頼のおけるものでなければならない。すなわち、金
銭的な圧力でゆがめられたものであってはならない。

    医科学に対する商業的な関心は広範囲にわたり、本質的なものともいえ
    る。しかし、金銭は医科学にさまざまな歪みをもたらしうるし、その例
    を挙げるに不自由しない。企業がスポンサーの研究では、しばしば金銭
    的な利益が科学的な見方を凌駕してしまいがちである。

    JAMA誌は製薬企業がスポンサーの研究の統計解析は独立したアカデミ
    ックな施設の統計家が行うよう求めている。これを嫌ってJAMA誌には
投稿しない製薬企業が存在する。

    医学雑誌の場合、企業がスポンサーである研究や、企業との関係が深い
    研究を行った大学や研究機関の研究者が、まさにその同じ人物が研究
    論文のみならず、総説を書き、論説、コメント、展望までも書くので
ある。

    どのようにして雑誌の編集者は、医師が患者によりよいケアをもたらす
    科学的知識を媒介できる、歪みのない記事を提供できるであろうか? 
    何よりもまず厳格な査読と編集者の注意深い評価が大切である。いまひ
    とつ重要なのは、読者が執筆者の金銭的関係と利益相反に気づいて、そう
    したことを知った上で記事の内容を解釈することである。

    1985年以来、JAMA誌の編集者は、執筆者たちが書く内容に影響を与
える可能性のある金銭的な利害関係を明らかにするよう求めてきた。ま
た1989年からは執筆者たちのすべてに対し、それらを明らかにした書
類に署名を求めてきた。1990年にJAMA誌は、これらの情報を公開す
ることを始めた。1999年にはJAMA誌は、執筆者たちに金銭的なスポ
ンサーが研究あるいは論文で果たした役割を報告することを求め始めた。
2005年には、われわれは論説で再度これらの重要性に注意を促した。

    しかし、多くの執筆者たちが金銭的関係の開示の重要性を理解していな
い。それゆえ、2006年の晩春にわれわれはこれらを強調し、2006年7
月11日号の本誌にも掲載した。加えて、何人かの執筆者たちが利益相
反を正しく誌上で開示していなかった例で、われわれは単なる訂正です
まさず、執筆者から読者へのお詫びの手紙を掲載した。1つの例では論
説でもとりあげた。また印刷直後に気づいた例では、冊子体の配布と
同時にオンラインでの詳細な訂正を行った。

    利益相反についての情報公開で他の効果的な手段は、執筆者の属する施
    設における責任者による吟味である。メイヨークリニック医科大学とネブ
    ラスカ大学医学部の責任者による介入は、これらが重要で効果的なこと
を実証した。

    金銭が医科学に及ぼす影響についての意識が向上し、利益相反の開示が
    もつ意味が正しく評価され、医師や患者がJAMA誌を読んだときに適
切な解釈がなされるよう、議論が活発化することを望みたい。

  (T)

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