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医療用医薬品の処方をアドバイスする医師や研究者が企業との金銭関係を持っている

2005-12-20

(キーワード: 処方ガイドライン、製薬企業との金銭的な関係、ネーチャー誌)

 処方ガイドライン執筆者の35%が製薬企業との利益相反関係を有している。中にはガイドラインが推奨する医薬品を販売する企業の株を所有している執筆者もいる。ガイドラインの49%が執筆者の利益相反関係について詳細に明らかにしていない。これは、総合科学誌として著名な「ネーチャー」誌が、医師たちに処方をアドバイスするガイドラインの執筆者たちと製薬企業との関係について独自の調査を行い、「金銭への私欲が医薬品使用についてのアドバイスを汚染させている」と題する記事(437,1070・1071,2005)で明かにした結果である。以下はその掲載記事の要旨である。

   調査の結果、医薬品の処方規則を執筆している研究者や医師が製薬企業と
   広範囲の金銭的関係を持っていることが明らかとなった。公衆衛生の専門
   家たちは、「この種のものとしては最大規模のこの調査の結果は、製薬企
   業が、医薬品がどのように処方されるかの決定をゆがめていることを示唆
   している」と、語っている。

   臨床ガイドラインの執筆者たちの約70%が製薬企業の影響下にあり、3分の
   1を超える執筆者たちが当該製薬企業との金銭的なつながりを明らかにして
   おり、中には、執筆者全員がガイドラインの推奨する医薬品販売企業から
   金銭を受け取っている例もあった。

   公衆衛生の専門家は、ガイドラインは医師たちに特定の医薬品の処方を推奨
   するので、その影響は臨床試験や総説(Review)の場合よりも憂慮されると、
   指摘している。

   ネーチャー誌は、米国立ガイドライン情報センターに2004年に集められてい
   る世界的な200以上のガイドラインを対象に調査したが、個々の著者について
   企業との経済的利害関係に関して詳細な記載があるのは、そのうち90のガイ
   ドラインにすぎなかった。また、それらのうち製薬企業との利害関係をもっ
   ていなかったのは31のみであった。

   個々の執筆者について企業との金銭関係が記載されている90のガイドライン
   に関しては、その半数のガイドラインで執筆者の1人以上が製薬企業の利害関
   係がある部門のコンサルタントをしていた。また、執筆者の3分の1以上が、
   販売企業が行う当該医薬品のセミナーに協力していた。そしてガイドライン
   の10に1つは、当該医薬品の販売企業の株券を保持している執筆者が1人はい
   た。

 なお、当会議は日本肺癌学会に対し、ゲフィチニブ(イレッサ)使用ガイドラインを作成した執筆者たちのアストラゼネカ社との経済的利害関係を明らかにするよう求めたが、同学会は拒否している(※1)。
                                (T)