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薬事法改正・血液新法制定問題

1 薬事法改正・血液新法制定問題とは

薬害エイズや薬害ヤコブ事件の教訓から、法律の改正が求められた。具体的には、1956年に制定され、すでに時代に合わなくなっている古い法律である「採血及び供血あっせん業取締法」の改正と、薬害エイズ事件の和解後に改正された薬事法の再改正である。この問題は、医療機器の安全対策、バイオ・ゲノム時代の安全対策、医薬品市販後安全対策の充実と承認・許可制度の見直しと合わせ、薬事行政の大きな課題となっていた。
厚生労働省は、2002年1月30日に「薬事制度見直し(案)の概要について」を公表し、これらの問題についての基本方針を提示した。そして、2002年4月には、「薬事法及び採血及び供血あっせん業取締法の一部改正案」をまとめ、国会に提出した。

2 取り上げた経緯

以上の動きを受けて、当会議では、この改正案について検討し、要望書をまとめることとした。

3 何が問題か

薬事法の一部改正案は、薬害エイズ事件に続いて薬害ヤコブ病という大きな事件が起きたことから、その教訓を汲んで、生物由来製品の安全性確保を目的のひとつにしており、その点では積極的意義を有すると考えられた。しかしながら、提案された安全性確保策は、必ずしも十分であるとは言い難く、次項記載のような点でさらに改正が必要と考えられた。
また、採血及び供血あっせん業取締法の一部改正案は、血液製剤の安全性と安定供給の確保や利用の適正化と被採血者の保護を図ることを目的とし、そのために、国・自治体・採血事業者・血液製剤製造業者並びに医療関係者の責務を規定しており、これらのことは重要と考えられた。しかしながら、この目的が文字通り実行に移されるためには、改正案ではなお不十分であり、特に次項記載のような点でさらに改正が必要と考えられた。

4 基本的な行動指針

  1. (1) 薬事法の一部改正案では、以下の点も改正すべきと考えられた。
    1. ① 薬事法の目的である医薬品等の有効性・安全性・品質の確保についての企業と国の責務を明記する(第1条)。
    2. ② 中央及び地方の薬事・食品審議会に薬害被害者・消費者・市民団体の代表を参加させるべきである(第3・4条)
    3. ③ 有効性・安全性等の情報を国民に伝えることについては、第77条の三の4で「薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医薬品を一般に購入し、又は使用する者に対し、医薬品の適正な使用のために必要な情報を提供するよう努めなければならない。」と規定されているが、この「努力義務」を「義務」とすると共に、国と医療施設もこうした義務を負うようにする。すなわち、「・・・提供しなければならない」とする。
    4. ④ 前項に関連するが、医療用医薬品の「患者用添付文書」の作成について、薬害エイズ事件の後、厚生省(当時)は、「医薬品による健康被害の再発防止対策について」(1996年7月)において、「患者が特に副作用等に注意して使用する必要のある医療用医薬品については、医師または薬剤師が、製薬企業が用意する患者向け説明文書を患者に説明、交付するような仕組みを定着させる」との方針を明記している。ところが、その後5年を経過するにもかかわらず、この方針は実現されていない。この問題については、当会議も2001年5月に「医薬品情報提供のあり方に関する提案」として要望している通りである。医療用医薬品の「患者用添付文書」の作成を企業に義務付けることを、あらためて強く要望する。
    5. ⑤ 厚生労働省とは別個に独立して、患者・国民の立場で医薬品等の有効性・安全性等の監視活動を行う「医薬品監視機構」(仮称)を設置すべきである。
    6. ⑥ 保健衛生上の危害の発生又は拡大防止のための厚生労働大臣の「緊急命令」は第69条の二に規定されており、等の場合に「・・・応急の措置を採るべきことを命ずることができる」となっているが、例えば「前項の『医薬品監視機構』(仮称)が要請した場合」等、この「緊急命令」を発動すべき要件を規定すべきである。
  2. (2) 採血及び供血あっせん業取締法の一部改正案では、以下の点も改正すべきと考えられた。
    1. ① 改正案では、「第16条関係」で、「何人も、有料で、人体から採血し、又は人の血液の提供のあっせんをしてはならないこととすること」と記されている。これは当然だが、1999年2月に中央薬事審議会企画・制度改革特別部会に提出された「血液事業の新たな枠組みの考え方」において提言されているように、「日赤等から製造業者に対する原料血漿の提供価格を認可制にする」こと、更に「血液製剤製造業者から医療機関への販売価格も適正価格に押さえる形での認可制とする」ことも法律に明記すべきである。
    2. ② 血液製剤の安全性に関する情報の収集及び提供の責務は、製造・輸入・販売業者の責務となっているが、この責務を国にも負わせるべきである。
    3. ③ 「基本理念」において、「血液製剤は、原則として国内で行われた献血により得られた血液を原料として製造されるとともに、安定的に供給されるようにしなければならない」とうたわれている。これは、薬害エイズの教訓から見て、極めて重要なことであり、「国内自給」を早期に達成すべきである。そのため、完全国内自給を達成するまでの日程の目途を付則で法制化すべきである。
    4. ④ 薬事・食品衛生審議会に薬害被害者・消費者団体の代表を参加させるべきである。
    5. ⑤ 前項のことのみならず、政府とは独立して国民の立場から血液の安全を監視する「血液安全監視委員会」(仮称)を創設すべきである。
    6. ⑥ 「医薬品副作用被害救済制度」において、血液製剤は血漿分画製剤を除いて「対象外医薬品」となっている。しかし、血液製剤による健康被害者も当然救済制度の対象とすべきである。この点については、「ヒト細胞組織等に由来する医薬品等による健康被害の救済問題に関する研究会」において検討が重ねられ、法制化が予定されているが、過去の被害者も含めて対象にし、早期に制定を行うべきである。

5 具体的行動とその結果

2002年4月23日に、前項の内容を盛り込んだ「薬事法及び採血及び供血あっせ ん業取締法の一部改正案に関する要望書」をまとめ、厚生労働大臣に文書で提出した。そして、パースンのメンバーは国会議員への働きかけも行った。
法案は、国会の審議において、「血液製剤は、国内自給が確保されることを基本とする」等の一部修正が行われ、付帯決議も採択の上、2002年7月24日に全会一致で採択された。

6 今後の課題

以上のように、要望書の一部は国会の審議において改正案に取り入れられたが、多くはそのようには扱われなかった。今後、それらの必要性を訴え、機会を見て再度の改正を求めていく必要がある。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2002-04-23
「薬事法改正に関する意見書」提出