調査・検討対象

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「医薬品の市販後安全対策の改善について(案)」に対する意見

1 市販後安全対策とは

新薬の有効性/安全性については、第1相から第3相までの臨床試験で検討され、その成績をもとに製造/販売が承認されることになっているが、それだけでは安全性の確保は不十分である。そのため、これまでも[医薬品の市販後調査の基準](GPMSP)が定められ、市販後の副作用監視の体制づくりが行われてきた。

2 取り上げた経緯とその後の経過

従来の市販後調査の内容は必ずしも満足のゆくものではなく、実態はむしろ市販後の新薬売り込み競争に利用されていた面もあった。今回、厚生省は市販後における医薬品の安全性確保を目的として、「市販直後調査(仮称)」を導入するとともに、「再審査に係る市販後調査の見直し」を検討することにした。このため厚生省では、2000年7月18日付で「医薬品の市販後安全対策の改善について(案)」に対する意見と情報を求める通知書を安全対策課と審査管理課の名で発送した。

3 何が問題か?

厚生省は今回の「市販直後調査(仮称)」導入にともない、これまで定められていた“患者の使用成績調査"(=いわゆる3000例調査)については、「治験段階での副作用検出・分析の制精度が向上したから」とか、「必要性が乏しくなった」という理由で廃止の方針が打ち出された。しかし実態は、もともと“日本の臨床試験は危険の検出力が劣っており、最近ようやくそのあたりが多少認識されるようになり、精度が向上した"だけのことであり、欧米先進国に比べればけっして満足のできる状況ではない. ここで必要なことは症例数の規定を外すことではなく、個々の症例を恣意的に選択できるような市販後調査のあり方を改めることである。今回の「市販直後調査」導入に際しても、投与した全例に関する情報を漏れなく収集することを義務づけるべきである。
また今回の発表では、実施計画書はGPMSPに基づいて作成すれば、あらかじめ提出の必要はないとしているが、GPMSPに基づいてきちんと計画されているか否かの判断をいつ誰が行うかも不明確である。報告すべき情報は原案では「企業は、(薬との)関係が疑われる重篤な副作用等の発現があったときには、速やかな詳細情報の収集に努める」とあるが、その判断に恣意性が残る。詳細情報の収集に努めるべき条件を、「軽微でない副作用の発現、もしくは重篤な副作用の発現に連なる可能性が否定できない事象に接したとき」と改めるべきである。

4 基本的な行動

2000年8月11日、上記の点を指摘する「医薬品の市販後安全対策の改善について(案)に対する意見書」を安全対策課長および審査管理課長あてに提出した。

5 その後の状況と問題点

2004年の薬事法改正に伴い、市販後の安全対策とそのシステムは大きく変化した。 従来の市販後調査の実施に関する基準(GPMSP:Good Post-Marketing Surveillance Practice)が、製造販売後の調査及び試験の実施基準(GPSP:Good Postmarketing Study Practice)と製造販売後安全管理の方法に関する基準(GVP:Good Vigilance Practice)に別れ製造販売業者の責任・義務が明確に規定されるようになったことは評価できるが、この改正で個々の医薬品の安全性がどれだけ高まったかは明らかでない。業務が複雑化しただけ、責任が分散したり、アリバイ作りに終わる可能性もあり、監査・監視の機能がどこまで高められるかを厳しくチェックする必要がある。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
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2000-08-11
「医薬品の市販後安全対策の改善について(案)」に対する意見、提出