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未承認医療機器

1 未承認医療機器とは

「医療機器」とは「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であつて、政令で定めるもの」(薬事法2条4項)であり、薬事法上、さらに「高度管理医療機器」「管理医療機器」「一般医療機器」の3つに分類される(同条5〜7項)。これらの医療機器を「業として」「製造販売」する場合には、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければならない(同法14条)。
かかる薬事法が規定する厚生労働大臣の承認を受けていない医療機器を「未承認医療機器」という。

2 取り上げた経緯

2009年10月、視力矯正手術の一つであるレーシック手術を中心業務として行う医療機関が、施術に際し、未承認医療機器を使用している旨の報道がなされた(同報道では60万を超える症例に未承認医療機器を使用しているとのことであった)。
この報道をきっかけに、視力矯正手術を中心業務とする他の医療機関での使用状況をホームページを中心に調査した。その結果、複数の医療機関で、ホームページ上で施術に際し使用する旨表示・説明している医療機器に未承認医療機器が含まれていたことが判明した。なお、未承認医療機器であることの具体的な説明はなかった。

3 何が問題か

  1. (1) 「業として」の「製造販売」等を禁止した薬事法の趣旨に反すること
    薬事法では、未承認医療機器の「使用」そのものは禁止されてはいない。製造販売行為を禁止すれば十分であると考えられたためであるが、医療機関(医師)が未承認医療機器を個人として購入し、これを不特定多数の患者に使用しているという使用実態に鑑みれば、「製造販売」を規制するだけではその規制目的を達成することができないことは明らかであり、薬事法の趣旨に反する結果となっている。
  2. (2) 薬事法による規制が骨抜きにされる危険性があること
    (1)で指摘した薬事法の欠陥により、眼科領域に限らず未承認医療機器が広く患者の治療に供されている可能性がある。こうした状況が放置されれば、とりわけ海外の医療機器製造販売業者にとっては、厚生労働大臣の承認を受けずに、未承認医療機器を日本国内で製造販売することが実質的に可能となるため、日本国内での製造販売にあたって厚生労働大臣の承認を得る必要性が減少し、ひいては薬事法の規制が骨抜きにされる危険性がある。
  3. (3) 患者にとって相当程度の危険性があること
    未承認医療機器は、薬事法が求める有効性・安全性を備えていることが確認されていない。また、不具合が生じた場合の原因究明と責任追及が困難となり得る可能性があるため、未承認医療機器の使用は、患者にとって相当程度の危険をもたらす。
  4. (4) 定期的な保守・点検作業(メンテナンス)が困難となる要因があること
    医療機関(医師)が未承認医療機器を使用する場合、十分な専門的知識・経験を有するメンテナンス業者の確保が容易でなく、また、多額のメンテナンス費用を必要とする。未承認医療機器には、医療機器にとって必要不可欠なメンテナンスが必要かつ十分に実施されない危険性が内在している。
  5. (5) 患者の知る権利、自己決定権が侵害される可能性があること
    医療機関(医師)が患者を治療するにあたって、当該患者に対し、治療に用いる医療機器の性状、性能、リスク等について説明がなされることはほとんどない。一方の患者においても、自身に使用される医療機器の性状、性能、リスクに関して注意を払うことはごく希である。このため、医療機関(医師)が、患者に対して未承認医療機器を使用する場合、患者のインフォームド・コンセントが確保されず、また、患者の知る権利が侵害される可能性がある。

4 行動指針

  1. (1) 厚生労働大臣に対し、①薬事法を改正し、医療機器の「使用」そのものを厚生労働大臣の承認制とすること、②日本国内での未承認医療機器の使用実態を調査し、結果を公表すること、③未承認医療機器に関する個別症例把握システムを構築し、情報を分析し、その公表を公表するよう一連のシステムを整備すること、④未承認医療機器を使用する医療機関に対し患者へのインフォームドコンセントを徹底するよう指導することを求める。
  2. (2) 日本眼科学会及び日本眼科医会に対し、①会員を通じて未承認医療機器の使用実態を調査し、結果を公表すること、②各会員に対し、未承認医療機器を用いる際のインフォームドコンセントを徹底するよう指導することを求める。

5 具体的行動とその結果

2010(平成22)年4月5日、厚生労働大臣、日本眼科学会及び日本眼科医会に対し、要望書を提出。同日記者レクを実施し、一部新聞で要望書が紹介された。

6 取り組みの問題点・今後の課題

要望書で指摘した未承認医療機器の使用による危険性が現実のものとなることを防止するための根本的な対策は薬事法の改正(前記4(1)①)である。改正が実現するまでは、未承認医療機器の使用による危険性を今後も広く訴え続ける必要がある。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2010-04-05
未承認医療機器に関する要望書提出