調査・検討対象

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アドエア

1 アドエアとは

一般名 プロピオン酸フルチカゾン・キシナホ酸サルメテロール(配合剤)
商品名 アドエア100ディスカス、同250ディスカス、同500ディスカス
企業名 グラクソスミスクライン
効能・効果 成人における気管支喘息
用法・用量 各1噴霧を1日2回

2 取り上げた経緯

アドエア(海外での商品名は「セレタイド」)は、既にフルタイドおよびセレベントとしてそれぞれ単剤で承認され臨床で使用されているプロピオン酸フルチカゾン(フルチカゾン)各100μg、250μg、500μgとキシナホ酸サルメテロール(サルメテロール)50μgを1回噴霧量として、コンプライアンスを高めるとの目的で配合された製剤である。2004年4月15日に、グラクソスミスクライン(GSK)より、成人および小児における気管支喘息を適応として申請された。
フルチカゾンについては、英国の調査により重篤な急性腎不全が報告され、他のステロイド剤に比較して危険性が高いこと、サルメテロールについては、SMARTの中間解析結果により生命を脅かす喘息発作や喘息に関連する死亡を増加させるリスクが示唆されたこと、歴史的にもβ作動剤のイソプロテレノールや、フェノテロール(ベロテック。β2作動剤とされながら実は心刺激性の強くβ2選択性はない)は、突然死との関連性が、疫学調査的にも臨床的にも動物実験でも証明されていることなどから、米国の医薬品監視団体パブリックシティズンが「用いるべきでない」薬剤としてセレベントをあげたことなど、海外からも警告がなされている。両成分とも気管支喘息の長期維持療法として用いるには危険な薬剤であり、配合剤としての臨床的意義がないばかりか、配合剤とすることで危険性が一層増すと考えられるため、承認されないよう要望することにした。

3 何が問題か

以下3点の理由から、プロピオン酸フルチカゾン(フルチカゾン)、キシナホ酸サルメテロール(サルメテロール)を配合成分とするアドエアを、気管支喘息の長期維持療法として用いるのは危険である。両成分の危険性に加え、配合剤とすることで危険性が一層増すと考えられる。

  1. (1) プロピオン酸フルチカゾン(フルチカゾン)の危険性
    プロピオン酸フルチカゾン(フルチカゾン)は、吸入で使用しても、他のステロイド剤よりも脂溶性が高く組織への滞留が長く、急性副腎不全の害が報告されている。さらに、アドエア中のフルチカゾンの用量設定は、既に承認されているフルチカゾン単剤(フルタイド)の1日最大量800μg(成人)を超え、小児用製剤でも1日200μgとなり上限量である。調整が困難で過量になりやすいことが容易に予測される。
  2. (2) キシナホ酸サルメテロール(サルメテロール)の危険性
    キシナホ酸サルメテロール(サルメテロール)は、長時間作用型のβ作動剤である。喘息治療におけるβ作動剤は基本的には発作時に症状軽減を目的として一時的にのみ使用すべきものであり、定期的使用すべきでないとされている。定期的使用、連続使用では、効果の減退と突然死の危険があることが、イソプロテレノールや臭化水素酸フェノテロール(フェノテロール)によりすでに示され、サルメテロールのランダム化比較試験や、長期使用した複数の疫学調査においてもすでに突然死増加の危険性が示されている。
  3. (3) 配合剤とすることの危険性
    1. ① 過量使用につながる用量設定
      承認申請されたアドエアのサルメテロールの用量とフルチカゾンの用量は、サルメテロールが50μgとフルチカゾンが100μg、250μg、500μgの3製剤で、各1日2回で設計されている。フルチカゾン500μgの製剤を使用した場合には1日量が1000μgとなり、フルチカゾン単剤の製剤であるフルタイドの成人における1日最大用量の800μgを超え、副腎抑制の危険が極めて高まる。
    2. ② 配合剤であることによる用量調節の困難さ
      気管支喘息の治療においては、症状に併せて、ステップダウンまたはステップアップが適正になされる必要があるが、サルメテロールにより持続的に気管支を拡張させ続けることにより、ステロイドを増量すれば改善するはずの持続性炎症を隠蔽し、劇症化ひいては喘息死の危険が高まること、また用量の調整が難しく不必要に過量投与につながる危険もある。配合剤としての臨床的意義がないばかりか、配合剤とすることで危険性が一層増すと考えられる。

4 基本的な行動方針

承認されてから、発売取り消しに持って行ける可能性は、この間の実績をみても極めて低い。承認させないことが危険を回避する近道である。そのためには、危険な薬剤であること、承認し市販された場合には、喘息死が増加する危険があること、既承認製剤の上限を超える用量であり矛盾があること等を指摘し、承認を阻止する。

5 具体的な行動と、その結果

2005年5月26日、厚生労働大臣に対して「セレタイド(フルチカゾンとサルメテロールの配合剤)承認審査に関する要望書」を提出し、当会議ホームページにて公開した。
しかし、本剤は2007年4月にアドエアの名称で承認され6月薬価収載された。承認を阻止することはできなかったが、小児への適応は取り下げられ、臨床的位置付けも「重症度等から慎重かつ適切に選択する必要がある」として一定の使用制限がなされた。また高用量のアドエア500ディスカスの1日用量が既存製剤フルタイドの上限用量を超えていることも問題にされたが、長期投与時および本剤投与時の安全性および有効性について検討することを条件に承認された。

2008年9月、成人5736人小児1637人に対する市販後調査の結果をもとに若干の添付文書改訂がなされた。2009年1月には、250ディスカスに慢性閉塞性肺疾患(COPD;慢性気管支炎、肺気腫)への効能追加と、100ディスカス(フルチカゾン100μgサルメテロール25μg)、アドエア50エアー(フルチカゾン50μgサルメテロール25μg)が、小児の気管支喘息(吸入ステロイド剤及び長時間作動型吸入β2刺激剤のへ羽陽が必要な場合)に製造承認された。すでに小児に使用されている実態を踏まえての迅速承認が要請(薬食審課長通知)されての審査であり、不十分な国内での臨床試験データをもとに有効性については確認したものの、軽症を含む小児への適応の妥当性、4歳以下小児の安全性、フルチカゾン、サルメテロ−ルの長期使用における安全性については確認が得られず、市販後調査(使用実態下での安全性・有効性調査)に検討をゆだねるという、問題残す承認であった。

6 今後の課題

米国FDA小児諮問委員会(2007/11)は、小児への適応承認(2006年3月9日)以降2007年7月30日までにFDAのAERS(Adverse Event Reporting System) に集積された小児の死亡例(SLM23、FP+SLM15例のうち、14例、9例が喘息悪化による死亡)の存在および、小児においてホルモテロールにステロイドを追加しても死亡のリスクを減じなかったというデータをもとに、小児への長時間β作動剤とステロイド剤のリスクベネフィットは好ましくない可能性があり、徹底的に分析する必要があると勧告している。
審査部会自身も本剤の審査にあたって、軽症例および低年齢小児への適応の妥当性に懐疑的であり、危険性を認識しているのである。この事実を広く知らせるとともに、安易な承認条件の付与ではなく実質的なリスク軽減対策の措置を実施させていくことが求められる。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2005-05-26
セレタイドに関する要望書提出

機関紙

該当する情報はありません。