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弁護士報酬敗訴者負担制度問題

1 弁護士報酬敗訴者負担制度とは

「弁護士報酬の敗訴者負担制度」とは、民事裁判で負けた者に、勝った者の弁護士報酬(の一部)を支払わせるという仕組みをいう。

2 取り上げた経過

現在、自分が依頼した弁護士の報酬は、裁判の勝ち負けに関係なく自分で負担することになっている。交通事故、医療過誤、公害被害、悪徳商法被害など、相手方の不法行為による損害の賠償を求める裁判では、判決で被害者が勝ったときは弁護士報酬の一部を損害と認めて加害者に負担させている。他方、被害者が負けたからといって相手方の弁護士報酬を支払うことはない。
ところが、司法制度改革審議会は、2001年6月の意見書で、「弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者にも……訴訟を利用しやすくする見地から」敗訴者負担を導入すべきとし、内閣に設置された司法制度改革推進本部は、この制度の導入を検討し、現実の問題となった。
そこで、当会議は2003年8月30日、「意見書」を提出した。

3 弁護士報酬敗訴者負担制度の導入に反対する2つの理由

  1. (1) 薬害被害者の司法アクセスを困難にすること
    薬害被害者の中には、薬害に悩まされつつ、証拠の偏在や経済的な困難という2重3重のハンディのもと、訴訟を闘い抜くことの負担に耐えきれず、訴訟提起を断念し、あるいは、訴訟提起をしたものの敗訴を余儀なくされた例も少なくない。
    もし、このうえ、訴訟の結果敗訴した場合には被告企業の弁護士報酬を負担しなければならないリスクが加わるとなれば、薬害被害者たちが、訴訟を提起すること自体を断念し、泣き寝入りをせねばならなくなる。
    薬害被害者のような弱者には、訴訟促進効果より、敗訴の危険性を危惧することによる訴訟提起抑制効果の方がはるかに大きい。敗訴者負担制度の導入は、薬害被害者の「裁判所へのアクセス」を困難にし、実質上裁判を受ける権利を奪うに等しい。
  2. (2) 薬害訴訟の公共政策形成機能を奪うこと
    薬事行政においては、薬害訴訟で国や被告企業の責任が追及され、国民の批判を受けることによって、はじめて制度改革が行われるという事態が繰り返されてきた。つまり、薬害被害者の血のにじむ闘いが、薬害防止の公共政策を形成してきたのである。
    ところが、本制度が導入されれば、薬害訴訟提起自体が回避され、その結果、薬害訴訟のもつ公共政策形成機能が奪われ、薬害再発防止への道も一層困難になる。

4 その後

本制度は「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」として、第159回通常国会に上程されたが、実質審議はなされず、継続審議となった。
この間も弁護士会、法律家団体、市民団体、労働組合等々が相次いで反対の意見表明をした。そして、同法案は、2004年12月3日、第161臨時国会の閉会に伴い廃案となった。

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