調査・検討対象

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薬害肝炎検証・再発防止委員会最終提言の実行状況の検証

1 薬害肝炎検証再発防止委員会最終提言とは

薬害肝炎検証・再発防止委員会(正式名称「薬害肝炎の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」)は、薬害肝炎事件に関する厚生労働省と原告・弁護団の基本合意に基づいて厚生労働省に設置された委員会であり、薬害被害者の他、当会議の事務局長が委員として参加した。
委員会は、2年間の審議を経て、2010年4月に最終提言を公表した。その最終提言には、過去の集団訴訟や当会議の薬害防止活動に基づく問題意識も反映されており、薬害防止のために不可欠な改革案が盛り込まれている。

2 取り上げた経緯

最終提言の実行については、歴代の厚生労働大臣が実行を約束したが、最終提言の最も重要な課題のひとつであった第三者監視評価組織をはじめ、多くの課題が実現されていない。
そこで、最終提言から約4年を経た現状において、実行状況を改めて検証し、今後の課題を確認することとした。

3 何が問題か

最終提言の重点課題についての実行状況を箇条書きで整理すると以下のとおりである。

  1. (1) 基本的考え方
    1. ① 予防原則の重視
      最終提言は、予防原則の尊重を強く打ち出したが、HPVワクチンの副反応をめぐる厚生労働省の対応等には、生かされていない。
    2. ② 人材育成
      生物統計家の育成を求めたが進んでいない。生物統計家の不足は、最終提言後明らかとなったディオバン事件においても、大学の研究者が臨床試験の統計解析をノバルティス社の社員に委ねる背景となっていた。
  2. (2) 法による臨床試験規制・被験者の権利確保
    臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会では法制化に踏み込めず、新たに臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会を設置して審議中である。
    法制化の流れはできつつあるが、その範囲が限定される可能性がある。
  3. (3) 市販後安全対策
    1. ① 添付文書
      薬事法は改正され承認申請時に届出が義務付けられた。但し、最終提言が求めた承認事項化はなされず、医薬品制度改正部会において厚労省が確認していた改善命令規定もなく、後退している。
    2. ② 広告規制
      イレッサに続き、ディオバン(ノバルティス)、ブロプレス(武田)など広告のあり方が問題になった。刑事事件にも発展した。しかし、広告の定義の見直しを含め、法的規制の見直しや、監督体制強化は行われていない。
    3. ③ RMP制度
      RMP制度は、平成25年4月からスタートした。しかし、最終提言が強く求めた薬剤疫学的手法を生かすことは、行われていない。
    4. ④ リスクコミュニケ-ションの強化
      患者からの副作用報告制度は創設されたが、入力の複雑さと広報不足により活用されていないのが現状である。その他のPMDAの体制強化は実現していない。
  4. (4) 抗がん剤等による健康被害救済制度
    創設のための検討会が設置され、2012年8月に検討会報告書が公表されたが、「引き続き検討」というにとどまった。その後、検討のための厚生科学研究班が設置され、現在、その報告を待っている。
  5. (5) 薬害教育・薬害資料館
    薬害資料館については、研究班が設置され進行中である。薬害教育について、初等中等教育で利用できる教材はできたが、活用が課題である。高等教育への対応は不十分である。
  6. (6) 利益相反管理
    製薬協の「透明性ガイドライン」が実施された。しかし、公開の範囲や方法に課題がある。また、ガイドラインではなく、法的義務とすることについては、厚生労働省の検討会の見解は消極的である。
    厚生労働省の審議会の利益相反管理ルールの矛盾は子宮頸がんワクチン問題によって明らかになり、現在、検証のための委員会が設置されている。
  7. (7) 第三者監視組織創設
    最終提言の目玉であったが、実現していない。最終提言の求めた実効性のある委員会の創設のためには、法に少なくとも次の3点が明記された法案が閣法として提案されることが必要であるが、政府案ではこれらが確保できていないからである。
    1. ① 監視・評価の対象である医薬品行政機関からの独立
    2. ② 自ら調査審議並びに勧告等を行う権限を有すること
    3. ③ 独自事務局の設置

4 今後の活動方針

大臣交渉やロビー活動を通じて、最終提言全般の実現を求める粘り強い交渉を行っている薬害肝炎原告団・弁護団とも連携をとりつつ、個別具体的な課題について、HPVワクチン問題や、研究不正問題など具体的な問題をとらえて、最終提言の実現を迫っていきたい。

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