調査・検討対象

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Tポイントサービス

1 Tポイントサービスとは

Tポイントサービスとは、DVDレンタル・書店チェーン最大手の「TSUTAYA」を展開しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)が提供する日本最大の共通ポイントサービスであり、約4093万人の会員が利用している。本サービスは、一部の医薬品販売業者(ドラッグストア)においても導入されている。

2 取り上げた経緯

Tポイントサービスにおいては、Tカード提示時に会員が購入した商品名等の個人情報がCCCに送信される。この個人情報は、①会員が商品購入等をした当該加盟店からCCCへ提供された後、②当該会員の個人情報はCCCと(当該商品購入加盟店ではない他の)各加盟店間で営業案内等のため使用することが可能であり、③会員が会員登録をした段階では加盟店ではなかった加盟店にも当該会員の個人情報が以後提供され得る、という仕組みとなっている。
すなわち、会員(CCCにおいて氏名、年齢、性別等が特定可能)が購入した医薬品の購入歴(商品名及び代金)をデータとして取得して利用する仕組みとなっているのであるが、このような仕組みは、会員には十分に理解されているとはいえず、また個人情報保護法や刑法にも抵触するおそれがあると考え、検討することとした。

3 何が問題か

  1. (1) 会員はしくみを十分に理解していないこと
    上記2記載のTポイントサービスの仕組みそのものについても、医薬品を購入した場合の情報の扱いについても、会員はその全貌を十分に理解していない。会員情報の扱いを定めるT会員規約4条においても、上記の仕組みは理解困難であり、また医薬品購入時の個人情報の取り扱いについて明示されていない。
  2. (2) 医薬品購入歴の特殊性
    特に、医薬品情報(医薬品の購入歴)は、患者のプライバシー権保護という観点からも、高度な法的保護を受けるものであり、刑法及び個人情報保護法に抵触し得る。
    具体的には、第1に、ドラッグストアが患者の医薬品情報をCCCに提供する行為(上記2①)は、医薬品情報を扱う「薬剤師」や「医薬品販売業者」が業務上知った秘密(患者の医薬品情報等)を漏らしたとして、刑法(134条、秘密漏示罪)に抵触する可能性がある。
    第2に、会員が十分に理解しないまま、会員の個人情報を第三者である加盟店との間で利用する行為(上記②③)は、個人情報保護法(23条1項)に抵触する。

4 基本的な行動指針

上記の問題の改善を求めるため、当会議は、2012年11月20日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)、医薬品販売業者(ドラッグストア)としてTポイントの加盟店(ポイントプログラム参加企業)となっている5社、および個人情報保護法違反企業に対して勧告・命令・指導権限を有する厚生労働大臣、経済産業大臣、内閣府特命担当大臣(消費者庁)、消費者委員会に対し、「Tポイントサービスに関する要望書」を提出し、CCCおよび医薬品販売業者に対しては、医薬品購入歴情報の抹消および加盟店契約自体の解消等を、各担当大臣に対してはCCCおよび医薬品販売業者たる加盟店がかかる情報抹消と加盟店契約解消等を行うよう勧告・命令・指導することを求めた。

5 その後の動きと問題点

2012年12月10日付でCCCから、また、同12月中の日付で医薬品販売業者各5社から、回答書を受領した。
しかし、回答書はいずれも、Tポイントサービスが「個人情報保護法及び刑法に何ら違反するものではなく」、「T会員のプライバシー権を侵害する行為を一切行っていないものと確信しております。」というように、結論のみを抽象的に述べる、わずか1枚のものであった。
このCCCの回答書には、公開に制限を付して、CCCが委任した弁護士作成の意見書(以下「意見書」)が添付されているが、かかる意見書には以下のような問題がある。

  1. (1) 当会議が、T会員が仕組みの全貌を理解していないという点を問題視しているのに対し、意見書においてはこの点に全く触れず、T会員規約が存在し会員がTカードを提示していることによって会員の同意(承諾)があったものと解釈しており、議論がかみ合っていない。
    また、T会員が規約を確認して同意しているという事実につき、CCCの弁護士らは「真実性・正確性について独自に調査又は確認を行ったものではない点につき留意されたい。」と限定を付している。すなわち、全く実態調査を行わないまま独自の理論を展開し、当会議の指摘する問題点には全く答えていない。
  2. (2) 当会議は、個人情報保護法違反について、当会議の要望書は、「CCCが」取得した会員の個人情報を第三者である「加盟店との間で」利用する行為(上記②③)を個人情報保護法違反として問題視しているのに対して、意見書は、誤って、その前提としての「加盟店が」会員の個人情報を「CCCに」提供する行為(上記①)について検討している。すなわち、意見書は、当会議の問題意識と対応していない上、そもそも個人情報保護法の規制及びその対象について正しく理解していない。
  3. (3) 意見書は、「一般用医薬品」および「処方せん医薬品」等、およそ本件の「医薬品」の購入情報は刑法134条で保護される「秘密」に該当しないとする。一般用医薬品の購入情報は「『一般的にみて何人も他人に知られることを欲しない』情報とまではいえない」こと、処方せん医薬品の場合は、医薬品販売業者からCCCに提供される情報には商品名等が入っていないことを理由としている。
     意見書は、医薬品情報が全般的に「一般的にみて何人も他人に知られることを欲しない」情報であることを全く理解していない(例えば、一般用医薬品である発毛剤、水虫・カンジダの薬、シラミ駆除薬など「一般的にみて何人も他人に知られることを欲しない」といえないとは言い難い)。処方せん医薬品も、医薬品の名称が入っていなくても、購入頻度、購入店舗、購入金額が特定できる以上、ある程度の推測が可能であるから、「秘密」性を否定するのは誤りである。
    意見書では、医薬品情報の意味や重要性が理解されていない。

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  • 薬害オンブズパースン会議
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2012-11-20
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