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臨床研究・治験活性化5か年計画2012

1 「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」とは

厚生労働省が2012年から向こう5年間の治験活性化策として策定した計画である。
1996(平成8)年の薬事法改正に基づき、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」、いわゆるGCP(Good Clinical Practice)省令が制定された。これにより、治験の倫理性、科学性等に関する水準は向上したが、医療機関等の実施体制が必ずしも十分ではなく、1997年以降の治験実施件数は、それ以前よりも大きく減少した。そこで、治験を活性化するため、2003年4月に文部科学省と厚生労働省は「全国治験活性化3カ年計画」を策定、これは1年延長された後、2007年3月には「新たな治験活性化5カ年計画」を策定した。今回の「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」は、これに続く計画であり、2011年8月に設置した「臨床研究・治験の活性化に関する検討会」のとりまとめ結果である。

2 取り上げた経緯

治験における被験者保護は、当会議の重要な関心事であり、薬害肝炎検証再発防止委員会にも意見書を提出してきた。そこで、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」の案(以下、「2012案」という)に対するパブリックコメントが募集されたのに応じて、意見を述べることとした。

3 何が問題なのか

2012案は、9年間の活性化計画を踏まえたさらなる飛躍と自立、日本発の革新的な医薬品、医療機器等創出に向けた取組(イノベーション)を2本柱として掲げている。倫理審査委員会の登録制度、認定制度が提案されるなど評価すべき内容も含まれているが、大要以下の問題点がある。

  1. ① 被験者の権利の確立と、臨床試験を法の支配の下に置くという視点が不十分である。
  2. ② 臨床試験等の多くが企業の資金に依存し、その結果として、患者や真の医療上のニーズではなく、利潤の追求という観点が優先し、必要性に乏しく質的にも問題のある臨床研究や治験が行われる一方で、真に医療上の必要性のある臨床研究は治験が行われているとは言い難いという状況にあるという現実への対応策が不十分である。

4 具体的活動

パブリックコメント募集に応じて、2012案に対し、以下の10点にわたってパブリックコメント(「『臨床研究・治験活性化5か年計画2012(案)』に対する意見書」)を提出した。

  1. ① 「被験者の権利の確立」が臨床研究・治験の活性化の不可欠の前提であることを明示したうえで、臨床研究・治験の企画立案の段階から患者が参画することの必要性を指摘し、全体の構成において、被験者の権利や倫理にかかわる項目を「2. 日本発の革新的な医薬品、医療機器等創出に向けた取組(イノベーション)」から独立させ、2012案の1本の柱と位置づけるべきである。
  2. ② 「臨床研究に関する倫理指針」の2013(平成25)年の改正に当たっては、指針として改正するのではなく、法制化を図ることが積極的に検討されるべきことを明記すべきである。また、法制化の検討は、他の指針やGCPとの関係など、日本の被験者保護全般に関わる事項を整理する場を設けて行うべきことを明記すべきである。
  3. ③ 臨床研究の質に関する規定を設けることは、短期的課題とし、前項記載の法制化に際して規定すべき事項とすべきである。
  4. ④ 臨床研究・治験の事前の登録の義務化と公開範囲の拡大の必要性について明記し、前記の法制化に際して、記載すべき事項と位置づけるべきである。
  5. ⑤ 企業の利益に反する可能性がある場合であっても、研究者が携わった研究結果は研究者の義務として公表することが保障されるための制度整備が必要であることを明記し、これも、前記の法制化に際して、規定すべき事項とすべきである。
  6. ⑥ 倫理審査委員会・治験審査委員会の登録制度や認定制度は短期的課題とし、ネットワーク化についても明記すべきである。
  7. ⑦ 利益相反関係の管理の厳格化を図り、基準及び審査結果等の公表を義務づける必要性を明記すべきである。
  8. ⑧ 臨床研究のための公的基金創設について明記すべきである。
  9. ⑨ 人材育成について、医学部教育のコアカリキュラムの改訂、生物統計等の大学講座の創設などを具体的に記述するべきである。
  10. ⑩ 国民への普及啓発活動については、被験者保護に関する法制度の整備、臨床研究・治験に関する登録と情報公開の徹底、啓発活動に関するガイドラインの策定などが、必須の条件であることを明記するべきである。

5 今後の課題

パブリックコメント募集後、再度検討会が開催されたが、2012案はほとんど修正されることなく確定し、当会議の意見は反映されなかった。
今後も被験者保護と臨床研究・臨床試験の公正さを担保することの必要性を機会をとらえて主張していくことが必要である。特に、被験者保護については、2013(平成25)年を目処に現在の「臨床研究に関する倫理指針」が見直されることとなっている。これについて法制化を求めていく活動を行いたい。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
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2012-03-09
「『臨床研究・治験活性化5か年計画2012(案)』に対する意見書」(パブリックコメント)を提出

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