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薬害イレッサ訴訟「下書き」問題に関する要望書提出

2011-10-20

薬害オンブズパースン会議は、2011年10月20日、薬害イレッサ訴訟「下書き」問題について、日本臨床腫瘍学会、日本肺癌学会、日本血液学会、及び日本学術会議に対して要望書を提出いたしました。

薬害イレッサ訴訟において、本年1月7日、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所から、被告国及び被告アストラゼネカ社には被害者を救済する責任があるとする和解勧告が示されましたが、被告国は、水面下で関係学会に働きかけて、和解勧告を批判する内容の見解を公表するよう求めていました。一部の学会に対しては、声明文の案(下書き)まで渡していました。

この問題に関する厚生労働省の検証チームの調査報告書は、働きかけの結果「学会や個人から公表された見解自体に、不当な影響力ないし圧力が及んでいたとは認められない」としていますが、厚労省の働きかけがなされてからきわめて短期間で見解が公表されていることや、厚労省から渡された「下書き」と公表された見解の類似性(後掲資料参照)からすれば、厚労省からの影響力が強く及んでいたことは明らかです。見解が、学会内での十分な議論と適切な手続を経て作成されたものであるのかについて、強い疑問があります。

学会が国と企業の責任を認めた和解勧告を批判する見解を表明したことは、マスコミでも大きく取り上げられ、大きな影響を与えました。その学会が、事前に国から見解公表についての要請を受けていたという事実は、科学者としての倫理感の欠如を示すものであり、学会の公正さに対する社会の信頼を大きく揺るがせるものです。学会には、事実関係を自ら説明する責任があると考えます。

そこで、厚労省からの働きかけを受けて学会名の見解を公表した日本臨床腫瘍学会、日本肺癌学会、日本血液学会に対して、事実関係を調査しその結果を公表するよう要望しました。
調査においては、厚労省からの働きかけの具体的内容、働きかけを受けてから見解公表までの学会内の手続、学会及び関係学会員とアストラゼネカ社との利益相反の有無等について明らかにすることを求めています。

また、この問題は、行政・産業と科学者との関係はどうあるべきか、そして科学者の社会的な発言がどうあるべきかについて、重大な問題を提起していると考えられることから、日本学術会議に対しても、この問題の事実関係を調査し、その内容をふまえた上で、学術団体と行政や企業との関係の在り方について、日本学術会議としての見解を公表するよう要望しています。