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抗うつ剤パキシル錠の児童・青年を対象とした製造販売後臨床試験に関する情報の公開を求める要望書提出

2009-07-16

 2009年7月16日付でグラクソ・スミスクライン株式会社と厚生労働省医薬食品局審査管理課へ「抗うつ剤パキシル錠の児童・青年を対象とした製造販売後臨床試験に関する情報の公開を求める要望書」を提出しました。

要望の趣旨
「パキシル錠の児童・青年期大うつ病性障害に対する有効性および安全性の臨床評価 -プラセボを対照とした二重盲検並行群間比較試験-」に関し、以下の情報の公開を求めます。

(1) 本臨床試験の実施が必要かつ妥当であると判断した根拠(表記臨床試験実施の必要性と妥当性についてどのような検討を行ったのか、その内容と判断理由)
(2) 特に、臨床試験実施の前提として日本の小児における効果が期待されるとするならば、それはどのような情報をもとに判断されたのか、その根拠となる情報
(3) 試験プロトコル最新版(過去における改定内容の記録を含む)
(4) 被験者リクルートの現状(現時点までの試験参加施設名と各施設におけるリクルート人数、および各施設で用いられている被験者用説明文書)
(5) 現在までに報告されている有害事象に関する情報(発現例数および個別症例の臨床経過等に関する情報)



 当会議が2009年7月16日付でグラクソ・スミスクライン株式会社(以下GSK)と厚生労働省医薬食品局審査管理課へ提出した「抗うつ剤パキシル錠の児童・青年を対象とした製造販売後臨床試験に関する情報の公開を求める要望書」について、GSKから9月30日付の回答を受領しました。

 要望書では以下についての情報の公開を求めました。
(1) 臨床試験の実施が必要かつ妥当であると判断した根拠
(2) 臨床試験実施の前提となる根拠情報、すなわち日本の小児におい て効果が期待されると判断した根拠
(3) 試験プロトコル最新版
(4) 被験者リクルートの現状(試験参加施設名と各施設におけるリクルート人数、被験者用説明文書)
(5) 報告されている有害事象に関する情報(発現例数、個別症例の臨床経過等)

 GSKからの回答では、(1)と(2)について「海外臨床試験で有効性が検証されなかった経緯はあるものの、日本の臨床現場から子どものうつに対して効果が認められたという声があった。学会からも使用できるようにしてほしいという要望がある」ということが記載されていました。
 薬の有効性を検証するためのランダム化試験実施の妥当性は、それまでの基礎的医学研究や症例研究、観察研究など、研究の蓄積があったうえで判断されるべきものです。
 しかし回答に書かれていた内容は、そのような研究の積み重ねに関することは含まれず、臨床使用経験からの声や一部の学会からの要望を、今回のランダム化試験の実施根拠としているというものでした。
 また、(3)(4)については、GSKおよび公的臨床試験登録ウェブサイトに公開されている「プロトコル概要」で情報提供ている、との回答でした。しかし公開されているものは、あくまでも「概要」であって、当会議が要望したプロトコルそのものではありませんし、また回答に示された「プロトコル概要」は、試験参加施設を特定できる情報を含んでいません。つまり「プロトコル概要」の公開をもって、情報提供したことにはなりません。
 (5)については、「確定した有害事象に関する情報はなし」との回答でした。
 子どもが対象となっている臨床試験であるだけに安全性の担保が特に重要であること、海外臨床試験では有効性が確認されなかった経緯があること、かつ自殺や攻撃性などの危険性が危惧されている医薬品であることなどを考慮すれば、概要のみならずプロトコルの詳細を公開し、また参加施設情報や被験者への説明方法なども公開したうえで、試験実施の妥当性や安全性確保について十分な再検討がなされるべきです。