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罰則をもって入院等を強制する感染症法の改正に反対します

2021-01-26

 薬害オンブズパースン会議は2021年1月25日、「罰則をもって入院等を強制する感染症法の改正に反対します」を公表し、国会に上程された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」改正案に反対の意見を表明しました。


  罰則をもって入院等を強制する感染症法の改正に反対します

 新型コロナウイルス感染症対策を念頭に、国会に上程された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という)の改正案は、入院措置に応じない者等に懲役刑・罰金刑を、積極的疫学調査に対して拒否・虚偽報告等をした者に対して罰金を科す規定を設けています。
 私たちは、罰則をもって入院等を強制することに強く反対します。
かつて、らい予防法やエイズ予防法は、感染症の蔓延防止を理由に、罰則をもって患者を取り締まり、患者やその家族に対する差別や偏見を著しく助長しました。現行の感染症法は、この過ちを反省し「過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」、「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応する」(前文)と明記して制定されたものです。罰則をもって感染者を取り締まる改正案は、この歴史的教訓に学ばす、感染者・患者の基本的人権を脅かすものです。
 どのような医療を受けるのかの選択権を含む患者の自己決定権は、個人の尊厳に深く関わる重要な基本的人権のひとつです。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐための対策が必要なことは確かですが、そもそも新型コロナウイルス感染症が入院拒否等によって拡大したという事実はなく、刑罰をもってこれを取り締まることが感染拡大防止に資するといえる根拠は見いだせません。また、新型コロナウイルス感染症については、医学的にも未解明な点が多く、入院先の確保を含め適切な医療の供給体制が保障されているとは言い難い現状にあります。このような環境下で、罰則をもって入院等を強制しようとすることは過度の人権制約という他はありません。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止は、患者・感染者を罰則によって取り締まることによってではなく、安心して入院や治療を受けることができる医療体制や検査・調査体制の整備、そして、十分な情報提供と理解、相互の信頼に基盤をおいた対策によって実現されるべきです。
 従って、改正法の罰則導入に強く反対し、見直しを求めます。   以上