調査・検討対象

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製薬企業出身者の独立行政法人医薬品医療機器総合機構への就業制限の緩和に反対する意見

1 機構の就業制限緩和問題とは

2004年4月1日に、医薬品審査体制の統合強化と安全対策の充実強化、生物由来救済制度の早期実現を目的に掲げて設立された独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という)は、業務の中立・公正を図るために、就業規則において、製薬企業出身者の就業を制限している(独立行政法人医薬品医療機器総合機構職員就業規則5条、同8条)。しかし、これまでに、機構の職員(413人)の約1割に当たる44人の製薬企業出身者が採用されたにもかかわらず、その事実が運営評議会に報告されていなかったことなどが明らかになった。機構は今後は報告する方針を明らかにしたが、内容は人数のみで、出身企業や具体的な業務内容の報告は除外している。
一方、製薬工業協会等は就業制限の撤廃を求め、総合科学技術会議専門調査会報告書(平成18年12月18日付「科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について」)も、機構の承認審査の迅速化、効率化のため、製薬企業等民間との人事交流を活発化させるため、機構の就業制限を緩和すべきであるとしている。

2 取り上げた経緯と問題点

  1. (1) 機構は、2001年に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画を受け、国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センターと医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構および財団法人医療機器センターの一部の業務を統合し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づいて設立されたものである。
  2. (2) 同法の制定に当たっては、薬害オンブズパースン会議、全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)、医薬品・治療研究会、NPO法人医薬ビジランスセンターは、医薬品の安全性確保の観点から以下のような問題点を指摘して、法案の制定に対する広範な反対運動を展開した。
    1. ① 薬害エイズの教訓を忘れた審査・安全対策部門と研究開発振興部門の統合
    2. ② 製薬企業からの人的独立性が確保されていない
    3. ③ 製薬企業への経済的依存
    4. ④ 実質的判断者と行政措置の分離による責任の所在の不明確化
    5. ⑤ 不透明な立案過程と不十分な審議
    このうちの②がまさに就業制限に関連する問題である。
  3. (3) その結果、2002年12月12日の参議院厚生労働委員会において、坂口力厚生労働大臣(当時)が、「医薬品等による健康被害に遭われた方々等のあいだに、①新法人の運営は、製薬企業等に人材や財源を依存する形となり、審査や安全対策が甘くならないか、②規制部門と振興部門が同一法人にあることにより、振興部門が規制部門に先行し、被害救済や安全対策が疎かにならないかとの懸念があることも、率直に受け止めたい」としたうえで、製薬企業からの就業制限については、「製薬企業等の元職員の新法人への就職と新法人への役職員の退職後の再就職について、業界との癒着がおこならないよう、厳格に対応するため、国家公務員に対する離職後従事制限の例を勘案し、就業規則等において、一定の制限を行うこと、等について、今後、新法人が適切に措置できるよう、細部についての更なる整理を行う」と記した書面を配布して答弁し、また法案の具体化に当たって薬害被害者との協議を行うことを約した。
  4. (4) そして、同法案の可決後、薬被連と厚生労働省との協議が重ねられ、その到達点のひとつとして、規定されたのが、独立行政法人医薬品医療機器総合機構職員就業規則の就業制限規定(同規則5条、同8条)なのである。
  5. (5) 製薬企業出身者の就業制限は、機構の基本的な性格にかかわる問題であり、上記のとおり、国会審議や薬害被害者らとの協議を経た業務の中立・公正確保のための到達点であるから、緩和・撤廃は認めるべきではないと考えて取り組むこととした。

3 基本的な行動指針

問題点を整理、指摘した意見書を提出し、マスコミ関係者にも情報を提供し、薬被連と機構との交渉をバックアップするという方針をたてた。

4 具体的な行動とその結果

  1. (1) 上記の問題点を整理したうえで、以下の骨子で2007年2月1日付で要望書を厚生労働省、機構に提出し、その後実施された薬被連と機構との交渉に同席した。
    1. ① 製薬企業出身者の独立行政法人医薬品医療機器総合機構への就業制限を規定した就業規則の緩和・撤廃に反対する。
    2. ② 就業規則を厳格に運用し、製薬企業、医療機器企業からの採用状況の詳細(出身企業、具体的な就業部署、業務内容)を「運営評議会」に対し定期的に報告のうえ、公表するよう求める。
  2. (2) 薬被連と機構との交渉の席上、機構の理事長は、薬害被害者の同意なくして就業制限を緩和することはしないと言明した。
  3. (3) しかし、2007年7月「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会報告書」は就業制限の一部撤廃を打ち出している。

5 今後の課題

真に求められる人材をどのように確保するかという問題を抜きに本問題についての真の解決はない。機構の現状を踏まえ、あるべき姿について具体的に提言していくことが必要である。省庁の再編問題なども視野に入れて検討していきたい。

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2007-02-02
製薬企業出身者の独立行政法人医薬品医療機器総合機構への就業制限の緩和に反対する意見書提出

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