調査・検討対象

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有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会ヒアリング意見

1 有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会とは

  1. (1) 有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会は、「有効で安全な医薬品を迅速に提供するため、承認審査のあり方や実施体制、安全対策等に係る事項等について幅広く検討すること」を設置目的に掲げて、平成18年10月に第1回が招集された。
  2. (2) 主な検討事項として掲げられた事項は以下のとおりである。
    1. ① 承認審査の方針や基準の明確化と市販後安全対策への取組みに関する検討
    2. ② 治験相談・承認審査の体制の充実に関する検討
    3. ③ その他医薬品の安全かつ迅速な提供に資する事項
  3. (3) 本検討会で検討すべき課題は、既に設置されていた「治験のあり方検討会」において議論すべき課題と重なる部分が少なくなかった。
    当会議では、同検討会に「被験者保護法の制定と、人を対象とするすべての研究を法 に基づいて管理・監視する制度の確立を求める意見書」「治験審査委員会にかかる医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改正する省令案」に関する意見書」を提出し、被験者保護法の制定と同法に基づく中央IRBの設立等を求め、同検討会では、被験者保護法についての議論等をする予定となっていた。
    しかし、その後、検討会そのものが招集されず、被験者保護法の問題は店晒しにされ たまま、一方で、本検討会が設置されたのである。

2 取り上げた経緯と具体的な行動指針

本検討会では、平成18年11月1日付で、承認審査のあり方や実施体制、安全対策等に係る事項等に関し、検討会に対して意見の提出を希望する消費者、事業者、研究者、それらの団体等に対し、検討会においてヒアリングを実施する団体を選定するという理由から、意見公募がされた。
承認審査のあり方や実施体制、安全対策等に係る事項は、当会議が関心をもって検討を重ね、意見書等を公表してきた事項であり、本検討会設置の経緯の問題点に照らしても、意見書を提出する必要があると考えた。

3 何が問題か

意見書において指摘した問題点の概要は以下のとおりである。

  1. (1) 検討に当たっての基本的視点
    検討会において検討すべき課題は、真に臨床上の必要性があり、有効性と安全性が科学的に確認された医薬品を迅速に提供するための方策である。迅速性ばかりが強調され、臨床上の必要性、有効性や安全性の吟味が不十分であってはならない。
    世界に先駆けて、わずか5ヶ月で迅速承認され、間質性肺炎等による多数の死亡者を出したイレッサのケースがよい教訓である。拙速な審査は患者の利益を害することを銘記すべきである。
  2. (2) 審査の充実の方策-PMDAの就業制限規定について
    日本製薬工業協会は、審査の迅速化をはかるために、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査部門の人員増を求め、その方策として、企業出身者の採用を促進するため、現在設けられている就業制限規定を撤廃することを求めている。
    しかし、就業制限規定は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法の制定の際、企業と規制当局との癒着が指摘された薬害エイズ事件等過去の薬害の教訓に学び、審査の中立と公正を担保するために必要な制度として、国会における審議と厚生労働大臣の答弁に基づいて設けられたものであって、撤廃すべきではない。
    製薬企業との人材交流を積極的に進めたFDAが規制能力を失った現実を直視するべきである。審査の充実のために、担当部門の人員増が必要であるとしても、就業制限を撤廃して人材の供給元を企業に求めるのでは本質的な解決とはならない。
  3. (3) 迅速な薬品の提供を妨げている真の原因
    問題の本質は、新薬開発が臨床的必要性に依拠せず、製薬企業の営業戦略の一部として実施され、真に開発に値する医薬品の候補物質の治験やこれに基づく申請に限定されていないところにある。同時に並行して行われる同種薬の治験が互いに競合し、被験者を集めることが困難であることや、実施医療機関の数が多過ぎて一施設当たりの被験者が極端に少ないという日本の治験の特殊性等により、治験期間が長期化していることが、審査期間短縮の問題以前に、解決されるべき課題なのである。
  4. (4) 市販後安全対策強化の方策
    市販後の安全対策については、有害情報の収集と分析評価のあり方が問題である。
    具体的には以下を提案する。
    患者からの有害事象の直接報告制度の創設。
    第三者による批判的な検討を可能とするため、情報公開請求に対する知的財産権保護に名を借りた非開示を改めるべきである。
    審査部門と安全対策部門の人的な遮断を厳格に保ちつつ、審査部門が有していた危険性情報等を市販後安全対策に有機的に生かすシステムの構築が必要である。
  5. (5) 本検討会設置の問題点
    「治験のあり方検討会」を店晒しにしたまま、本検討会を設置した経緯は不公正といわざるを得ない。

4 具体的行動とその結果

意見書は、2006年11月23日に提出し、同検討会で配布されたが、ヒヤリング団体には選定されなかった。

5 今後の課題

検討会は、これまで6回の会合を重ねている。前回には、国の承認を経ない未承認薬の使用に関して、事務局から「コンパッショネート・ユース(CU)制度の導入に関する論点」が呈示され、今後検討が進められることになった。当会議は、これまでにもサリドマイド問題を通して、未承認薬の管理などに関し提言してきているが、今回の進展も踏まえ意見書を出していきたい。なお最近、「治験のあり方検討会」の中断以前の議事録が公開され、検討会が再開された。議事録に今後の検討会の基本として明記されている「治験における被験者保護」の問題が検討会で深められるよう求めていきたい。本年5月22日が第7回の開催となる。傍聴のうえ、適切なタイミングで意見書を出すことが必要である。

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2006-11-24
有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会ヒアリング意見書提出

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