調査・検討対象

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「治験副作用等報告にかかる薬事法施行規則の一部を改正する省令(案)」に関する意見

1 改正案の概要

厚生労働省は、特に、医師主導治験における治験実施環境の改善や実務上の負担軽減等の要請の見地から、薬事法施行規則第273条に基づく厚生労働大臣への治験中の副作用・感染症症例報告の対象について、従前、報告義務対象となっていた海外において報告された「被験薬」等による「副作用」症例については製薬企業が報告義務を有することから、(国内既承認の医薬品を「被験薬」とする場合の)治験担当医師の報告義務の対象として海外において報告された「被験薬」等による「副作用」症例を外そうと改正するものである。
厚生労働省は、2005年11月22日、パブリックコメントを募集した(2005年12月21日〆切)。

2 上記改正の問題点

(1) 製薬企業に対する信頼を背景にすることへの疑問
上記改正案は当該製薬企業が適切に「副作用」報告をしていることを前提にしているものであり、製薬企業に対する絶対的信頼を基礎にしている。
しかし、古くはサリドマイド薬害、最近では薬害エイズ、薬害ヤコブなどこれまで の数多くの薬害事件では、製薬企業のこうした海外における「副作用」報告を適切に行わなかったために、未曾有の薬害被害につながった歴史的事実に鑑みれば、製薬企業が適切に「副作用」報告を行うか疑問である。

  1. (2) 薬事法との齟齬
    薬事法では、既承認薬の副作用については、海外において「副作用」として知られているものであろうとなかろうと関係なく医師等に対して報告義務を課す(薬事法第77 条の4の2第2項)。しかし、上記改正案では、海外において報告された「被験薬」等による「副作用」症例については医師等による報告義務を課さないことになる。
    本来、「被験薬」等は既承認薬より慎重な調査等が要求されるべきであるのに、却って医師の報告義務を軽減させており、不合理である。
  2. (3) 副作用報告における医師報告の重要性
    副作用等が発生した場合には、被験者の身体状態、投薬状況、副作用に対する対処等について適切に報告され、情報として集積されることが、医薬品の安全確保にとって必要不可欠である。
    こうした報告を最もよくなしうるのは、被験者に最もよく接している治験担当の医師であることからしても、医師の義務を強化することはあったとしても、これを軽減することはあってはならない。企業と同様に報告義務を課すことで、情報に意識的になるので、「副作用」が発現した際にもこれに早く気付くことが出来る。

3 方針

2記載の理由から、上記改正案には反対のパブリックコメントを2005年12月21日に提出した。
なお、今回のパブリックコメントは、2005年11月22日になされ、期限を同年12月21日必着としているが、僅か1ヶ月間では幅広い国民からの意見聴取が困難であるし、本改正案の施行時期を平成17年12月としていることから、パブリックコメントを検討し、今回の薬事法施行規則の改正に反映させていくつもりがあるのかは足して疑問である。そこで、こうしたパブリックコメントの形骸化についても批判を加えた次第である。

機関紙

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