調査・検討対象

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アラバ

1 アラバとは

商品名 アラバ (サノフィ・アベンティス株式会社)
一般名 レフルノミド
薬効群分類 免疫抑制剤(細胞毒性系)。
効能・効果 日本の添付文書上、関節リウマチに対して適応が認められている(どの程度の関節リウマチに使用すべきかは明らかでない)。

2 当会議における取り扱い経過

2003年4月、アラバ承認
2003年9月、アラバ発売開始。販売開始に際して、一旦販売中止されていたクエストラン(コレスチラミン)を本剤による害反応に対処する医薬品として再発売し、さらには市販後の全例調査体制がとられた。
2004年1月、間質性肺炎により発売後4か月間で5人が死亡したことが明らかになった。
本剤は、慢性関節リウマチの標準薬剤であるメトトレキサートに比し、「間質性肺炎の発症および増悪の副作用が非常に少ない」として専門医に期待感を与えたにもかかわらず間質性肺炎が多く、欧米ではないとされた死亡例が日本では発売後4か月間ですでに5人に上ったことから、その理由が、薬剤の性質そのものにある可能性もあるため、調査検討を要すると考えられ、取り上げられた。

3 アラバをめぐる経緯

  1. (1) 欧米の状況
    99年10月 ヨーロッパで、市販後に重篤な血液障害、皮膚症状が報告され、
    00年2月 米国で、添付文書改訂で注意喚起がなされた。
    02年3月 米国パブリック・シティズンは「重篤な肝毒性等の害反応があり、より有効で安全な代替薬剤が存在するため、米国食品医薬品局(FDA)に、本剤の市場からの撤去を求めた。
    01年3月 重篤な肝障害で、欧州において添付文書改訂
    03年10月 米国で添付文書を改定し、命を脅かす肝毒性・感染症について、黒枠警告
  2. (2) 日本の状況(2004年1月以降)
    04年8月2日 薬害オンブズパースン会議が厚生労働省とアベンティスファーマ株式会社に対し要望書
    04年11月2日 アベンティスファーマ株式会社より回答(但し公表不可)
    05年5月20日 薬害オンブズパースン会議、『「アラバ要望回答書」に対する意見書』をアベンティス ファーマ株式会社に郵送で提出
    07年4月20日 薬害オンブズパースン会議、「『「アラバ要望回答書」に対する意見書』について」に対する反論と再度の要望と題する文書を、サノフィ・アベンティス株式会社と厚生労働省医薬食品局安全対策課へ提出。

4 アラバの何が問題なのか

  1. (1) 重篤な間質性肺炎などが、高頻度に生じる
    販売開始以降、2005年4月4日までに全登録患者数5320例で、73に間質性肺炎(IP)を発症し、そのうち25人が死亡していた。まだ毒性が出ていない人がいるはずであるから、少なく見積もっても、70人に1人が間質性肺炎になり、約200人に1人が死亡している。
  2. (2) 薬剤そのものの性質としての害の起こりやすさ、出現した毒性からの回復の困難性
    アラバ(レフルノミド)は、関節リウマチを適応として、海外での比較臨床試験成績などに基づき承認されたが、実は本剤は、難治性の関節リウマチの標準薬剤であるメトトレキサート(商品名リウマトレックス)と同様、抗がん剤の系統の細胞毒系薬剤であり、それを少量使用することで、免疫抑制作用を期待して、重症の慢性関節リウマチに使用することが承認されたものである。
    体内に一旦入ると、排泄が極めて遅く、20人に1人は消失半減期(血液中の濃度が半分になるのに要する時間)が2か月にも及ぶため、そのような人では1年近くかけて血液中の濃度が上昇し、強い毒性を発揮することになる。一旦毒性が出現すると、解毒剤を用いても限界がある。これが、メトトレキサートと基本的に異なる点である。
  3. (3) スピード審査・スピード承認の問題
    アラバの承認は、ブリッジング・スタディという海外のデータを利用したスピード審査であり、日本人で厳密な管理下での最終臨床試験(第Ⅲ相試験)を実施していない。今回の事態は、肺がん治療用にイレッサを短期間で認可し、多数の死亡者を出したことに通じるものがある。
  4. (4) 効果が同等でより安全な代替薬剤がある
    アラバは、効果においては標準薬剤であるメソトレキサートやスルファサラジンに勝るものではない。死亡につながるような害反応がはるかに少ない代替薬が複数存在する。したがって本剤の保険薬使用を一時停止して第Ⅲ相試験で安全性・有用性を確認することは、患者の不利益をもたらさず、科学的かつ倫理的な態度と言える。
  5. (5) 安全にかかわる重要情報が開示されない
    間質性肺炎での死亡率が高いことが問題になって以降、必要な安全性情報が、医療関係者や患者・市民に公開されていない。安全性情報の全面的公開が必要である。

5 基本的な行動方針

国内の第Ⅲ相試験で有用性が確認されるまでの使用停止と、安全性情報の公開を求める。

6 具体的行動

  1. (1) 2004年8月2日 厚生労働省とアベンティスファーマ株式会社に対して、以下の要望書を提出した。
    1. ① アラバの一般臨床使用を一時停止し、本剤の使用を厳密に管理された臨床試験に限定する。
    2. ② 死亡例が報告された以降の安全性にかかわる情報を直ちに整理し、全面的に情報公開する。
    3. ③ 本剤の治療上の位置づけの明確化のため、 標準薬剤であるメトトレキサートが無効ないし使用不能の症例での、第2選択剤としての本剤の有効性、安全性についてデータを整理して示す。データが不足しているなら、臨床試験を行い明らかにする。
  2. (2) 2004年11月26日付でアベンティスファーマ社から回答書。これに対しに対し、反論の意見書『「アラバ要望回答書」に対する意見書』を2005年5月20日付で送付。
  3. (3) 2006年10月12日付で上記意見書に対する回答がなされる。2007年4月20日、回答に対する「反論と再度の要望」を、サノフィ・アベンティス株式会社と厚生労働省医薬食品局安全対策課へ提出。以下の事項を要望した。
    1. ① 間質性肺炎の発症割合の推移推定に必須の月別の新規処方開始件数、処方件数、販売数量処方件数等を明らかにすること
    2. ② 13週以降発症例のデータを用いたリスク因子の解析を早急に明らかにすること
    3. ③ 初期負荷投与量(Loading dose)をはじめ用量・用法を再検討すること
    4. ④ 一般臨床使用を停止すること

7 今後の課題

その後の間質性肺炎・死亡の規模を追跡調査し、再度要望の必要性などを検討する必要がある。