調査・検討対象

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フッ化物洗口の集団適用

1 フッ化物洗口の集団適用とは

集団(学童等)にう歯(虫歯)予防目的でフッ化物を含む洗口剤による洗口を展開すること。

2 取り上げた経緯

  1. (1) 厚生労働省等のフッ化物洗口推奨の動き
    厚生労働省医政局長・健康局長は、各都道府県知事に対し、「フッ化物洗口ガイドラインについて」(以下「ガイドライン」という)を配布し(2003年1月14日)、4歳から14歳を対象とする集団でのフッ化物洗口を推奨した。この「ガイドライン」は、厚生科学研究・フッ化物応用研究会編「う蝕予防のためのフッ化物洗口実施マニュアル」(平成15年3月20日、以下「マニュアル」という)の参照を求めている。
  2. (2) 養護教諭や保健所職員からの苦情
    当会議に、教育・保育現場におけるフッ化物洗口事業に危惧感を示す職員に対する陰湿ないじめ行為の苦情が寄せられた。

3 何が問題か

  1. (1) 医学的検討
    1. ① 危険性
      フッ化物洗口は、急性中毒の発症の危険性がある。週1回法を採用した場合は特に、全量飲み込みで急性中毒症状が発症する危険性が極めて高い。フッ化物洗口では、年齢が低いほど飲み込んでしまう割合が多いことが報告されており、水道水へのフッ素添加と同様に、発癌性を含む長期的害作用の危険性もある。
      また、フッ化物洗口の場合、フッ素添加の水道水を飲む場合より口腔内フッ素濃度が上昇するため、口腔癌、咽頭癌の発生の危険性はさらに上がる可能性がある。さらに免疫機能が未成熟な子どもが発癌物質に曝露した場合、大人より大きな影響を受けると考えられる。
    2. ② 必要性・有効性への疑問
      近年、子供の虫歯は減少しており、フッ化物洗口の必要性はそもそも低い。う歯予防は、歯磨きの励行、おやつへの注意、歯科検診と早期の虫歯治療など、フッ素を用いない方法を徹底することで充分である。
  2. (2) インフォームド・コンセント
    仮にフッ化物洗口に危険性を上回る有益性が医学的に認められると仮定しても、その集団適用には、インフォームド・コンセントの問題がある。このインフォームド・コンセント(充分説明されたうえでの承諾)の原理は、自己決定権の保障から導かれる手続きであり、事前説明事項としては危険性に関する情報がとりわけ重要である。そして、対象者が未成年者の場合、その保護者が対象者の最善の利益を判断して、選択(承諾又は拒否)する権利を保障するものである。
    1. ① 誤った説明は自己決定権の侵害であること
      「ガイドライン」や「マニュアル」には、安全性への危惧を完全否定する記述が目立ち、「マニュアル」における「フッ化物洗口希望調査書」書式例でも安全性(危険性)についての説明は一切ない。フッ化物洗口の危険性を指摘した見解の紹介もなく、有病者に対するフッ化物洗口の悪影響を否定する虚偽の記述もあり、安全性を過度に強調した啓発事業の展開が追求されている。
    2. ② 選択権保障の問題
      「マニュアル」では、洗口を拒否することが許されざることのように位置づけられている。また、「マニュアル」では、対象者・保護者の承諾書を不要としている。さらに、一方でフッ化物洗口実施の希望についてアンケートを実施すべきとしながら、拒否者が予想される場合にはアンケートの実施を行うべきでないとして、拒否権行使者の存在を顕在化させまいとしている。これらはおよそ自己決定権の保障に配慮しているとは言い難く、インフォームド・コンセントの名に値しないものである。集団にう歯予防目的でフッ化物洗口を展開することは、個人の自己決定権を侵害する違法な公衆衛生政策である。

4 当会議の行動とその後の情勢等

  1. (1) 当会議は2004年12月に「フッ化物洗口の集団適応に関する意見書」を提出した。もともとフッ化物洗口はわずかの園児や児童にすでに10年以上前から実施されており、厚生労働省のガイドライン、マニュアルの配付をきっかけに、フッ化物洗口を始める保育所、幼稚園、小学校が徐々に増加した。2008年現在、保育教育施設における集団フッ化物洗口の実施人数は50万人に達したと言われるが、対象子ども総数からみれば大きな数ではない。一方、フッ化物洗口が広がるのに比例して、養護教諭を中心とした反対運動が活発化し、秋田市や高崎市では賛成・反対それぞれの立場からのシンポジウムがひらかれ、当会議メンバーもシンポジストとして参加した。
  2. (2) フッ化物洗口の有効性に関連してコクラン・レビューが2003〜2004年にかけて3つ発表された。日本の子どもの状況に近い、歯磨きとフッ化物洗口との組み合わせの虫歯予防効果は、わずか7%で有意差がないことが示された。レビューではフッ化物洗口の有効性に関する論文が世界中から集められ検討されているが、日本の研究者が発表している「高い有効性がある」とする報告は、科学的な水準に達しないとして一遍も採用されていない。
  3. (3) 当会議に相談に訪れた看護師は、役場でフッ化物洗口の安全性への疑問を口にしたため、近隣のフッ素応用を推進する歯科医から村に圧力がかかり、配置転換された。訴訟を起こしたが敗訴し、結局、退職させられた(2007年末)。しかし現在、高裁で審理中である。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
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2004-12-24
フッ素洗口に関する再意見書を厚生労働省と文部科学省へ提出
2003-08-06
「フッ化物洗口の集団適用に関する意見書」提出

機関紙

2003-07-01
フッ素洗口について