調査・検討対象

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塩酸チクロピジン製剤

1 塩酸チクロピジン製剤とは

一般名 塩酸チクロピジン
商品名 パナルジン錠・同細粒10%(第一製薬株式会社)、イパラジン錠(マルコ製薬株式会社)、ジルペンダー錠(日新製薬株式会社)、ソーパー100mg錠(日本薬品工業株式会社)、ソロゾリン錠(小林化工株式会社)、チクピロン細粒(沢井製薬株式会社)、チクピロン錠(メディサ新薬株式会社)、ニチステート錠・同細粒10%(日本医薬品工業株式会社)、ネオピジン錠(オリエンタル薬品工業株式会社)、パチュナ錠(東和薬品株式会社)、パナピジン錠(日本ヘキサル株式会社)、パラクロジン錠(株式会社三和化学研究所)、ピエテネール錠(株式会社陽進堂)、ピクロジン錠(太田製薬株式会社)、ピクロナジン錠(大洋薬品工業株式会社)、ヒシミドン錠(菱山製薬株式会社)、ビーチロン錠(辰巳化学株式会社)、ファルロジン錠(東洋ファルマー株式会社)、プロパコール錠(日清キョーリン製薬株式会社)、マイトジン錠(鶴原製薬株式会社)
適応症 抗血小板剤として虚血性脳血管障害などに伴う血栓・塞栓の治療や慢性動脈閉塞症に伴う症状の改善等に使用されている。また、慢性動脈閉塞症、くも膜下出血後の脳血管撃縮における血流改善、血管手術・血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療の適応が承認されている。
承 認 1981年6月
販売高 年間約500億円
使用者 年間約100万人

2 取り上げた経緯

塩酸チクロピジン製剤は、当初から国内外で血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)等の重篤な副作用が知られるところであった。
しかし、これに対する厚生省(当時)の対策は、

  1. ①1995年6月 「海外での重大な副作用」として注意喚起
  2. ②1996年9月 国内での症例報告を受けて、「重大な副作用」の項に記載
  3. ③1998年9月 塩酸チクロピジンによるTTP発症に関する論文や米国での添付文書改訂を受けて、使用上の注意を改訂

というように、単に注意喚起をするだけであった。
その後も報告数が増加し、1999年6月までには発売以来22例(うち死亡例が6例)のTTPが報告されるに至った。
しかし、それを受けた厚生省の対策は、

  1. ④1999年6月 緊急安全性情報を出し、「警告」の項に記載
  2. ⑤2001年2月 使用上の注意の改訂

をするのみであった。
そして、2001年7月から2002年6月までの1年間に17例もの死亡例が報告されるに至った。
それにもかかわらず、厚生労働省が2002年7月に採った対策は、塩酸チクロピジン製造業者に対し、使用上の注意(警告欄も含む)の改訂、「緊急安全性情報」の作成及び医療機関等への配布を指示するだけであった。

3 何が問題か

  1. (1) 危険性
    特に、重篤な副作用としてTTP、無顆粒球症などの血液学的障害、および重症の肝障害の発現が知られている。厚生労働省によれば、これまでに49名もの人が死亡している(2002年7月24日時点)。2001年7月から2002年6月でも、TTP13例(うち死亡5例)、顆粒球減少(無顆粒球症を含む)35例(うち死亡6例)、重篤な肝障害97例(うち死亡6例)の重篤な副作用事例の報告があり、それ以降も減少していない。
  2. (2) 有効性
    より副作用の低いアスピリンと比較した場合、その効果に大きな差がない。
  3. (3) 薬 価
    アスピリンの約5〜80倍もする

4 当会議の対応

  1. (1) 要望書提出
    当会議は、2002年11月4日に厚生労働省に
    1. ① 副作用症例の詳細とその分析結果、被害実態につき調査し、公表すること
    2. ② 塩酸チクロピジン製剤は、アスピリンが使えない場合に適応を限定すること
    3. ③ 同製剤の必要性が限られたものである事や添付文書記載の「警告」や「使用上の注意」と同様の内容を患者用説明書を製薬企業に作成させるとともに、医師・薬剤師にはこうした情報を患者に周知徹底させること
    を求める要望書を提出した。
  2. (2) その後の対応
    しかし、厚生労働省は、何ら同製剤に対する抜本的対策をとらなかった。
    その結果、2002年7月の緊急安全性情報が発せられた後も、重篤な副作用を含む副作用の報告件数は減少しなかった。
    それにもかかわらず、厚生労働省の医薬局安全対策企画官は「現時点で新たな対策をとる考えはない」などと発言した。
    また、同製剤の代表的製造販売業者である第一製薬(パナルジン)は、代替薬の開発作業を進めているするだけで、現在の塩酸チクロピジン製剤に関する対策は検討されなかった。
    かかる事態は、代替薬が承認されるまで現状を放置しているものとしか考えようがなく、過去の様々な薬害事件において医薬品の危険性が指摘された後にとった対応と全く変わっていない実情を表している。
  3. (3) 再度の要望書提出
    そこで、当会議は、2003年9月19日に、再度、2002年11月4日付要望書と同趣旨の要望書を提出した。

5 その後

現在も事態は変っていない。
それどころか、薬物溶出ステントのうち「Cypher ステント」に関しては、抗血小板剤として塩酸チクロピジンの併用が承認されている(薬物溶出ステントの項参照)。その際に、2004年9月に医薬品・医療用具等安全性情報として「塩酸チクロピジン製剤とCypherステントの市販後安全対策について」を発し情報提供をしているが、単に医療従事者に適正使用を要請しているだけである。