調査・検討対象

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医薬品情報提供のあり方

1 医薬品情報の提供

薬は常に身体によいとは限らない。処方を間違えると身体にかえってよくない事態になる。重大な副作用があることもある。かつての非加熱濃縮血液製剤のように危険な異物が混入していることもある。これら重要な医薬品情報が患者に十分に提供されていない現実がある。

2 取り上げた経緯

トリルダンの項の死亡事例では、製薬企業が作成した患者用説明書には副作用の症状が具体的に記載していなかった(申入れ後、改訂した)。副作用が続いていたが患者は過労だと思い込み、医師も患者に副作用の有無を確認しなかった。患者は医師の処方どおりにトリルダンを服用し続けて死亡した。副作用情報について患者が情報提供されていたならば、死ななくてすんだ。
薬害エイズ事件後も、重要な医薬品情報が患者に届かないことによる悲劇が続いている。

3 何が問題か

患者は素人だから薬のことはわからない。詳しい情報を提供すると却って処方どおりに薬を服用しなくなるおそれがあり、好ましくない。これが製薬企業・医師・薬剤師の共通認識としてある。そういう現実はあるかもしれない。
しかし、自分の身体に起こった異変が副作用か疲れかは、患者が副作用情報を知らなければ判断できない。医師にも副作用が発生している事実が把握できない。その挙句、悲惨な事態が起こる。薬害エイズ事件では、患者が必死に非加熱濃縮製剤の危険性を知りたがっていたときに、製薬企業も厚生省も専門医もこれに応じなかった。身体の安全という最も重大な利害関係をもつ患者こそが薬の情報を十分に持つべきである。
この対立関係を知何に解消するかが問題である。

4 行動指針

患者の生命は患者のものである。医療の選択権は患者にある。患者の自己決定権が尊重されなければならない。そのための十分な情報が患者に提供されなければならない。
医師に最終的な判断を委ねているように見える患者が多いとしても、すべての結果を引き受けるのは患者なのであるから、製薬企業や医師、薬剤師は患者が自己決定できるようにしなければならない。関係者の努力という百年河清を待つようなことはできない。
患者の自己決定権を実質化するために、①患者向け説明文書の作成を製薬企業に法的に義務づけること、②説明文書の患者への交付を医療機蘭に法的に義務づけること、が早期に実現されなければならない。

5 具体的な行動と結果

当会議が、2001年5月30日、厚生労働省(当時厚生省)に対して、患者への医薬品情報の提供の必要性を訴える要望書『医薬品の情報提供のあり方に対する提案』を提出したことのほかに、医薬分業、規制緩和によるスイッチOTCの拡大など医薬品情報の提供のあり方について検討を要する状況もあって、厚生労働省は、2002年2月、医薬品情報提供のあり方に関する懇談会を設けた。
7回の会議(①2月9日、②3月21日、③4月18日、④5月9日、⑤6月20日、⑥7月18日、⑦9月1日)で意見書をまとめることになった。
しかし、この懇談会で患者の立場を重視した意見書が作られることはあまり、期待できそうもなかった。15人の委員は製薬企業・医師会・歯科医師会・薬剤師会・大学商学部教授などで占められており、薬害の患者はひとりもいない。案の定、議論は製薬企業と医師・薬剤師との関係が中心となり、患者への情報提供は中心にならなかった。
私たちは、2002年5月、トリルダンの事例を詳しく書いた意見書に関連資料をつけて懇談会に提出した。これで委員は患者への情報提供の重要性を意識してくれるようになると期待したが、厚生労働省の担当事務局は意見書の要旨を配布しただけでトリルダンの事例を委員に知らせず、関連資料も配布しなかった。患者への情報提供の重要性を主張する委員もいたが、大局には影響を与えなかった。

6 今後の課題

  1. (1) 消費者の意識改革
    学校教育の段階から薬に関する基礎的な理解をさせる教育を学校で行う。
  2. (2) 被害者運動
    薬害の被害者たちが患者への情報提供の必要性を訴えることが最も説得力がある。
  3. (3) 実践の積み重ね
    患者への医薬品情報の提供を医療現場で具体的に実践していくこと。患者に惰報提供することが医療機関にとってもプラスになることを示していく。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2001-05-30
「医薬品情報提供のあり方に関する提案」提出

機関紙

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