調査・検討対象

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アルブミン製剤

1 アルブミン製剤とは

一般名 (1)人血清アルブミン (2)加熱人血漿たん白
商品名 (1)アルブミナー、他 (2)献血アルブミネート、他
会社名 (1)ローヌ・ローラー・山之内、他 (2)日本製薬・武田薬品、他
適応 アルブミンの喪失(熱傷、ネフローゼ症侯群など)、及びアルブミン合成低下(肝硬変症など)による低アルブミン血症、出血性ショック

アルブミンは血漿に含まれる蛋白質の約6割を占め、血漿の浸透圧の維持や脂肪酸・ホルモン・薬物等の運搬などの役をする。アルブミン製剤の多くは輸入に頼っており、その適正使用が問題となっている。

2 取り上げた経緯

当会議では、1997年6月、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の問題に関して「硬膜使用患者の追跡調査等」に関し厚生省に要望書を提出したが、その回答が得られないまま日時が経過するうち、今度はCJDがアルブミン製剤を通じて伝達される可能性が疑われるようになった。それは、英国で作られたアルブミンを含む放射性診断薬のCJD汚染の可能性を指摘した新聞報道や、アルブミン製剤使用後にCJDを発症した事例があることが学術論文(2報)で報告されているからである。欧州医薬品管理庁も、新型CJD流行地のヒト血漿由来のアルブミンを使用しないよう指導している。
ところで、CJD病原体は熱に強く、滅菌対策が難しいが、採血後保存前の血液から白血球を除くのが有効との指摘もあり、この白血球除去が他にも利点があるとして、欧米諸国では血液製剤の白血球一律除去処理の義務化が検討されている。
以上のことを踏まえ、当会議のメンバーから問題提起。

3 何が問題か

前記のように、CJDがアルブミン製剤を通じて伝達されることがあるか否か、もし伝達されるとしたら、どのような対策が必要かということである。また、このことと関連して、欧米諸国で義務化が検討されている血液製剤の白血球一律除去処理がCJD対策としても有効かどうか、また、この処理法をわが国でも義務化すべきか否かということである。

4 基本的な行動指針

厚生省に公開質問書を提出し、公開質問書中で問題提起を行い、継続的に監視を行う。

5 活動とその後の状況

  1. (1) 厚生省への公開質問の提出
    1. ① 1999年2月19日に、「CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)対策についての質問書(1)〜人血清アルブミン製剤を通じてのCJD病原体の伝達の可能性について〜」と題し、7項目からなる質問書を中西明典厚生省医薬安全局長宛提出した。
    2. ② これに対し、厚生省からの文書回答は行われず、4月6日に当会議とタイアップグループのメンバー5人が厚生省を訪問し、5人の担当係官より口頭で回答を得た。
      回答の要旨は以下のとおりである。
      • アルブミンないし血液によるCJD伝達の可能性については、古典的CJDは、血液を介して伝達するという疫学的な証拠は確認されていない。新変異型CJDについては、情報を収集中. プリオンが扁桃・中枢組織のリンパ球に存在する理論的な可能性が指摘されている。香港で問題になった製品は日本に入っていない。厚生省は1999年2月19日に、「血液製剤の原料血液提供者が後にCJDを発症した場合、古典的CJDであればその血液製剤は回収しない」と決めたが、これは疫学的な尺度で判断している。新しい知見が出てきて、リスクがあることがわかれば別である。グレーな場合は回収の対象になる。
      • 英国由来のアルブミン製剤は日本に輸入していない。1998年にヒト由来物の医薬品の調査を製薬会社を対象に行い、英国由来のものは確認していない。
      • 血液製剤の採血国と売血・献血の表示については、中央薬事審議会で審議中。献血由来のものは「献血アルブミン」と表示している。
      • CJD問題での原料血液提供者のフォローについては、CJD研究班とサーベイランス委員会でCJD患者の献血歴を調べ、「あり」「不明」の時は主治医に実名を教えてもらうようにしている。そして、日赤の方で献血者リストと照合し、献血歴の有無等を調べ、その結果で適切な措置を取るようにしている。
      • アルブミン製剤によるCJD伝達防止対策としては、問診で疑わしい献血を排除。
      • 血液製剤の白血球一律除去処理義務化については、長所と短所があり、検討中。
      • CJDに関する研究体制は、特定疾患遅発性ウイルス感染に関する研究班とヒトプリオン病のモデル動物作成の研究班で研究している。
    3. ③ これらの回答に対して当会議メンバーは、「少しでもリスクがあれば回収すべきではないか」「添加剤について、輸入血が使われているか調べるべき」「白血球除去が有効とのデータが種々出されている。前向きに検討を」「CJDの研究体制の充実が必要だ」などの意見を述べた。
  2. (2) 輸血用血液の保存前の白血球除去
    この回答から約3か月後の1999年6月28日、中央薬事審議会の特別部会は、輸血用の血液の保存前に白血球除去を行うことを決定した。その理由としては「白血球は輸血後の発熱や呼吸困難などの副作用を起こす原因となっていることから、血液製剤の安全性を高めるため」とされている。

6 今後の課題:厳重な監視継続の必要性

英国からの報告によれば、2007年1月までに、英国で輸血後に変異型CJDに感染・発症した人が4人報告されている。いずれも赤血球輸血を受け、感染・発症は輸血の数ヵ月ないし8年半後であった。しかし、血漿分画製剤使用後の発症は確認されていない。(Health Protection Report 1(3),19 Jan. 2007)。CJD病原体は潜伏期が極めて長く、引き続き厳重な監視が必要である。

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