調査・検討対象

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オンブレス(ウルトラLABA)

1 オンブレス(ウルトラLABA)とは

一般名 インダカテロールマレイン酸塩
商品名 オンブレス吸入用カプセル150μg
薬価収載 2010年7月22日
企業名 ノバルティスファーマ株式会社
適応症 慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解
特徴 従来の長時間作用型β2−刺激剤(LABA)が1日2回の吸入を必要としたの に対し、本剤は1日1回の吸入により24時間作用が持続するとして、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する適応が認められた吸入用気管支拡張剤である。

2 取り上げた経緯

気管支拡張剤であるβ−刺激剤は、その薬理作用による心臓死や喘息死が問題となり、当会議は、過去にはフェノテロール(商品名:ベロテックエロゾル)の一時販売中止を要望し、また長時間作用型β2−刺激剤サルメテロールとステロイド剤の合剤(商品名:アドエア)に関しては承認しないことを求めた。
インダカテロールは、過去のβ−刺激剤に比べ、さらに作用時間が延長し、1日1回の吸入使用で24時間作用が持続することを特徴としている。
オンブレス吸入用カプセルの米国における本剤(商品名:ARCAPTA NEOHALER)の添付文書においては、喘息関連死リスクの増大につき黒枠で警告がなされているが、日本における本剤の添付文書においては、「重要な基本的注意」欄に気管支喘息治療目的の薬剤ではないことの言及がなされているものの、明確な喘息関連死への言及はなされていない。
また、オンブレス吸入用カプセルの承認時において、これらのリスクについて製造販売後調査において検討する必要がある旨の指摘がなされている。
そこで、同剤の市販直後調査の内容及びその結果を検討する必要があると考え、取り上げることとした。

3 何が問題か

  1. (1) わが国における承認の経緯
    FDAが上記リスクを懸念して追加臨床試験を行った結果、75μgの用量にて承認したのに対して、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、米国における追加臨床試験成績を踏まえれば75μgも一定の有効性を示す可能性はあると指摘しつつ、わが国では75μgの臨床試験を実施していないこと、75μgの用量においては、一部の試験で従来薬を上回る効果が得られず、150μg以上で安定した効果が得られており、安全性上も問題ないとして、150μgの用量によるCOPDへの適応を承認した。
    PMDAは、動悸、振戦、筋痙縮等のβ2 刺激薬の有害事象、咳嗽等の長期使用実態下での発現状況、重篤な心血管系・脳血管系有害事象についても適切な情報収集が可能な製造販売後調査を計画するよう求め、ノバルティスファーマ社は、これらを重点課題とした1年間の長期特定使用成績調査を実施し、安全性を検討するとした。
  2. (2) 市販直後調査結果
    2012年9月に、ノバルティスファーマ社により、市販直後調査結果が公表された。重篤な副作用情報の収集に関しては、4例について具体的情報が一覧表にて表示されているが、他に、死亡例1例、気胸1例、調査後因果関係が否定された肺炎1例が報告されている。
    市販直後調査の主要な目的が重篤な副作用・感染症情報の収集と安全対策の実施にあることに照らした時、公表された上記症例は、推定患者数約8,300人に対する発生数としては極めて少数であり、適切に調査・公表がなされているのか疑問がある。また本剤のリスク管理上最も重視すべきリスクは呼吸関連死等でありながら、死亡例と気胸発症例について詳細不明として何ら言及していない。

4 基本的な行動指針

PMDAは、過去の新薬承認と同様、臨床試験における問題点や低用量に関する有効性の評価を、臨床試験を課すことではなく、市販後調査に委ね、本剤の販売を承認した。
このようなPMDAの新薬承認審査の姿勢に対し、オンブレスの市販直後調査の内容及びその結果を検討し、問題点を明らかにするため、2013年1月31日、ノバルティスファーマ株式会社及びPMDAに対し、①市販直後調査の実施内容及び報告症例数が少ない原因、②長期特定使用成績調査のプロトコール及び実施状況等について尋ねる「『オンブレス吸入用カプセル』(ウルトラLABA)に関する質問書」を提出した。
これに対し、ノバルティスファーマ株式会社から2013年3月7日付回答を受領した。回答書においては、①市販直後調査における推定患者数は、販売数量(ノバルティスファーマ社から医薬品卸業者への出荷数量)を元に、平均的な治療期間を90日と仮定して算出したものであること、市販直後調査における副作用の収集は医療関係者の自発報告に基づくものであるため報告頻度が少ないこと、②特定使用成績調査実施要領が添付されており、投与開始後12週及び52週に調査票を記入して送信する方法により行うこととされており、重点調査項目は、(1)心血管系事象及び脳血管系事象等が発現した場合、(2)咳嗽が発現した場合には、その詳細情報の収集に努め、得られた情報を有害事象欄に入力するとされていること等が記載されていた。
この回答書により、市販直後調査の前提となる推定患者数の算出は現状と乖離していること、自発報告に委ねる現状では市販直後調査は重篤な副作用や有害事象を収集するシステムとして十分に機能していないこと、長期特定使用成績調査の実施要領において、調査重点項目が調査項目の項の最後に記載されていて、その重要性が軽視されかねない設定になっていたり、総合評価の基準も曖昧であったりするなどから、長期特定使用成績調査は再審査の資料となりうるか疑問であること等が明らかとなった。
なお、PMDAからの回答は届いていない。

5 今後の対応

質問書に対するノバルティスファーマ株式会社の回答を受け、市販直後調査、長期特定使用成績調査を含む副作用報告制度の現状及び今後のあり方を検討していく。また、2013年4月のRMPの開始以降の市販後安全対策の実態も把握していく。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2013-01-31
「『オンブレス吸入用カプセル』(ウルトラLABA)に関する質問書」を提出 / 回答書受領

機関紙

該当する情報はありません。