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ビスホスホネート

1 ビスホスホネートとは

<内服> (※一般名;商品名の順で表記)

エチドロネート ダイドロネル *3ヶ月に2週
アレンドロネート フォサマック、ボナロン *週1回が主流
レセドロネート ベネット、アクトネル *週1回が主流
ミノドロネート リカルボン、ボノテオ *月1回

<注射>*固形癌(乳癌など)骨転移による骨病変(痛み)、高Ca血症改善

パミドロネート アレディア
ゾレドロネート ゾメタ

ビスホスホネート(bisphosphonate;BP)は、破骨細胞の活動を阻害し、骨の吸収を防ぐ医薬品であり、骨粗鬆症、変形性骨炎(骨ページェット病)、固形癌(乳癌など)の骨転移、多発性骨髄腫、骨形成不全症、その他骨の脆弱症を特徴とする疾患の予防と治療に用いられる。骨量を確実に増加させ一部の骨折(脊椎骨の骨折)を有意に減らすことから国内外のガイドラインで骨粗鬆症治療薬の第一選択となっており、近年急速に使用している患者が増えてきている。(2009年度800億円)
ビスホスホネートの登場以前は、骨粗鬆症の治療薬の主体はカルシウムとビタミンDで、満足できる治療効果が得られなかったため、ビスホスホネートは非常に画期的な薬というのが一般的な評価である。

2 取り上げた経緯

FDAは、ビスホスホネートのリスクについて、非定型骨折の関連だけでなく、顎骨壊死や心房細動、食道癌との関連についても疫学的な広範囲のレビューを行い、非定型骨折については2年以上の継続でリスクが高くなることが明らかになった。2011年9月9日、FDAの諮問委員会は使用年数を制限するかどうか、一時的な使用中断を推奨するかどうか検討する会議を開催し、その会議で米国パブリックシチズンは、「骨粗鬆症による骨折防止のためのビスホスホネートの長期使用は5年に制限し、世界保健機関(WHO)が開発した骨折リスク予測ツール(FRAX)で、10年間の骨折リスクが有意な患者以外への使用は行うべきでない。」という提言を行った。しかしFDAの諮問委員会では、骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート製剤について、長期投与の注意喚起を促すラベル変更については賛成17・反対6で支持されたが、投与期間の制限や休薬期間については、臨床データが不十分として判断が見送られた。FDAは顎骨壊死との関係も明確には認めていない。日本ではPMDAがビスホスホネートの「大腿骨の非定型骨折」を評価中のリスク情報としてHPに掲載している。また、2011年11月8日には添付文書が改訂されているが、「大腿骨の非定型骨折と顎骨壊死」等の注意喚起の内容であり、FDAと同様に明確な使用制限等の対応とはなっていない。

3 何が問題か

  1. (1) 病気づくり(メディカライゼーション)
    1890年生まれの女性が60歳代のときの背骨の年間骨折率(約1.5%)に比べて、1920年生まれの女性の骨折率は5分の1程度(0.3%)に減少している(1980年代のデータ)。骨粗鬆症は近年とみに注目されるようになった疾患だが、骨密度計ができて簡単に数値としてはかれるようになったことによって、骨粗鬆症の診断が容易になり、骨粗鬆症と診断される患者が見かけ上増えているだけである可能性がある。骨粗鬆症は、数百万人の健康な女性にフォサマック(Fosamax)の市場を拡大するためにメルク(=MSD)によって大がかりなプロモーションが行われた疾患と指摘されている。
    日本の2011年骨粗鬆症ガイドラインでは骨折の既往が無くても骨密度等のリスクで薬物療法が開始される。WHOの骨折リスク評価ツールFRAXを活用し骨折リスクを評価することになっているが、基本的な考え方は2006年版と変わっていない。
  2. (2) 長期使用におけるリスクとベネフィット
    ビスホスホネートはP-C-Pという自然界に存在しない特殊な構造を持っており、骨のハイドロキシアパタイトに強い親和性を示し、吸収されたビスホスホネートのほとんどが骨組織に吸着する。一方、ヒトの体内では合成も分解もされない構造のため骨に強く吸着したビスホスホネートは長時間体内にとどまることになる。このため、現在では1週間に1回投与の製剤が主流であり、月1回や年1回投与の製剤も登場している。ビスホスホネートの骨量増加の作用機序は破骨細胞を直接阻害し骨吸収を抑制することであるが、骨形成促進作用はない。従って、骨量は増加するものの、骨の正常な新陳代謝は阻害され、その結果、当面の骨折は減少するが長期間継続すると残った骨は古い骨で占められ、もろくなり骨折しやすくなると考えられる。ビスホスホネートによる疲労骨折(大腿骨の非定型骨折など)と顎骨(あごの骨)壊死は同様の作用機序で説明できる。
    長期骨折介入拡張研究によると、骨粗鬆症と脊椎骨折の履歴を持つハイリスクの女性でさえ、使用5年を越えるとほとんどすべての患者でフォサマック(Fosamax)の効果を全く示すことができなかった。FDAが集めた分析が明らかにしているように、骨折発生におけるこのような効果の欠如は他のすべての経口のビスホスホネートにもあてはまる。他方、5年以上の継続投与は、非定型的大腿骨骨折と顎骨壊死の割合を3〜4倍増大させるという重大なリスクをもたらす。 FDAが分析している疫学調査のデータからは、ストレス骨折の特長を有する非定型症例でオッズ比が2年以上使用で著しく大きかった。
  3. (3) 副作用で投与を中止しても害作用が持続
    顎骨壊死などが起きて服用を中止しても、体内に蓄積されたビスホスホネートは生理的な骨吸収反応にかかわる破骨細胞に少しずつ貪食されて溶解し、それが血液循環に乗って腎臓から徐々に体外に排出されて体内から消失するまでに、多大な時間を要する。
  4. (4) 高用量製剤化の危険性
    日本では1日1回製剤から週1回製剤が主流になってきており、月1回製剤も承認され米国では年1回の注射製剤も承認されている。しかし、高用量製剤は低用量製剤と比較して害作用が大きくなる危険性がある。
  5. (5) その他
    食道癌などの発癌性や、心房細動、眼障害が報告されている

4 今後の対応

以上の問題点をふまえ、今後の対応を検討中である。

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