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新薬剤師国家試験問題

1 薬剤師法施行規則の一部を改正する省令案とは

薬剤師法施行規則第8条は、薬剤師国家試験の科目は、「基礎薬学」、「医療薬学」、「衛生薬学」及び「薬事関係法規及び薬事関係制度」と規定していた。
ところが、平成16年に学校教育法及び薬剤師法が改正され、平成18年度から新たな薬学教育課程として6年制課程が導入されるとともに、6年制課程を修めて卒業した者に薬剤師国家試験の受験資格が与えられることとされたため、新たな6年制課程において習得した知識、技能及び態度に相応しい薬剤師国家試験制度のあり方が求められることになった。
そこで、「薬剤師国家試験出題制度検討会」において検討が重ねられ、その報告書(2008年7月8日)を踏まえて、薬剤師法施行規則の一部の改正案が出された。同改正案の内容は下記のとおりであった。

  1. (1) 薬剤師国家試験は、必須問題及び一般問題に区分(一般問題にあっては、薬学理論問題及び薬学実践問題に更に区分)して行うものとする。
  2. (2) 必須問題の試験科目は、「物理・化学・生物」、「衛生」、「薬理」、「薬剤」、「病態・薬物治療」、「法規・制度・倫理」、「実務」の7科目とする。
  3. (3) 一般問題のうち薬学理論問題の試験科目は、「物理・化学・生物」、「衛生」、「薬理」、「薬剤」、「病態・薬物治療」、「法規・制度・倫理」の6科目とし、一般問題のうち薬学実践問題については、「物理・化学・生物」、「衛生」、「薬理」、「薬剤」、「病態・薬物治療」、「法規・制度・倫理」、「実務」の7科目とする。

2 取り上げた経緯

2009年6月29日、上記改正案に対するパブリックコメントの募集が行われたことから、当会議の意見を提出することとなった。

3 何が問題か

薬剤師法及び薬剤師倫理規定の趣旨からすると、薬剤師は、医薬品に直接携わる専門家として、医薬品の適正な使用を促進し、医薬品を正しく医療に生かすことによって、薬害の防止に重要な役割を果たすことが求められている。特に、改正薬事法のもとにおいては、リスクの高い第一類の一般用医薬品販売に際しては、薬剤師による対応が義務づけられるなど、近時、薬害を防止するために薬剤師に求められる役割はますます増大している。
ところが、これまでの薬学教育においては、自然科学的な「副作用教育」は行われてきたものの、社会科学的視点を含めた「薬害防止教育」はほとんど行われてこなかったか、行われたとしても選択科目等でごく簡単に触れられた程度に過ぎない。その結果、薬剤師国家試験の内容は、いわば国が薬剤師に求める必要不可欠な知識と技能であると同時に、国が教育現場に求める「あるべき薬学教育」に関するメッセージでもあるにもかかわらず、薬害の歴史、被害実態、その防止策等に関する知識は、これまでの薬剤師国家試験において、ほとんど出題されてこなかった。
そこで、薬剤師国家試験においては、薬害の歴史、被害実態、その防止策等、『薬害』に関する問題が毎年出題することによって、薬害防止教育が薬学教育の現場に浸透し、その結果、薬害の防止に関する必要不可欠な知識と技能を備えた薬剤師をより多く輩出する必要がある。
しかし、厚生労働省から提示された改正案には、『薬害』という言葉が全く存在せず、その結果、『薬害』に関する問題が、いかなる科目の中で出題されるのか明らかでないばかりか、従来通り出題されないことも大いに懸念されるところであった。

4 基本的な行動方針

新薬剤師国家試験において、毎年必ず薬害に関する問題が出題されるような、問題区分及び科目の設定を求める。

5 具体的な行動

2009年7月28日、以下の意見を趣旨とするパブリックコメントを提出した。

  1. (1) 必須科目及び一般科目(薬学理論問題並びに薬学実践問題を含む)に共通する試験科目に、『薬害』という独立の試験科目を追加することを求める。
  2. (2) 上記1記載の要望が困難であったとしても、「法規・制度・倫理」という科目名に『薬害』という言葉を追加し、「法規・制度・倫理・薬害」という科目名に改めることを求める。

6 今後の課題

2010年1月20日、薬剤師法施行規則の一部を改正する省令が交付されたが、問題区分及び科目名に『薬害』という言葉は入らなかった。
しかし、今後も、新薬剤師国家試験の中で薬害に関する問題が出題されているのか、実際の薬学教育の現場で薬害に関する教育がなされているのかを監視していく必要がある。

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