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特定保健用食品

1 特定保健用食品(トクホ)とは

「特定保健用食品」(トクホ)とは、「健康食品」のうち、健康増進法26条1項の許可又は同法29条1項の承認を受けて、食生活において特定の保健の目的で摂取する者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする商品である。
特定保健用食品(トクホ)は、国(現在消費者庁、以前は厚生労働省)が許可又は承認をした商品であり、商品上もそのことが文字及びロゴマークにより表記されている。近時、テレビCMや電車内等で、一定の保健目的(体脂肪の吸収を抑える、血圧を下げる等)が達成できること、及びトクホ(=国の許可又は承認を得ていること)であることが強調され、大々的に宣伝されている。2010年3月当時の資料によれば、特定保健用食費は、近時の健康ブームを背景に、年間6000億円という売り上げを上げるまでに拡大し、品目は900を超えていた。

2 取り上げた経緯

花王株式会社が製造・販売していた「エコナ」シリーズ(オイル、マヨネーズ)合計10品目は、1998年から平成2003年にかけて、厚生労働省から特定保健用食品に係る許可を得ていたが、これら「エコナ」シリーズに含まれていたジアセルグリセロール(DAG)という油成分中に、体内で発がん性物質になるおそれがある成分「グリシドール脂肪酸エステル」が高濃度に含まれていることが判明し、消費者庁が特定保健用食品の取消を含めて再審査することを表明、その後、2009年10月、花王自身が許可の失効届を提出した。この花王の「エコナ」シリーズ問題は、「エコナ」シリーズだけの問題に留まらず、特定保健用食品の許可手続の問題点を露呈したといえる。
そこで、当会議は、トクホ制度そのものに内在する問題点を取り上げ、検討することにした。

3 何が問題か

  1. (1) 許可基準及び許可後の監視の不十分さ
    特定健康用保健食品の許可は、特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領(2005年2月1日改訂)に基づいてなされているが、同指導要領は不十分である。
    まず、許可の要件は、「食生活の改善が図られ、健康の維持増進に寄与することが期待できるものであること」、「食品又は関与成分が、添付資料等からみて安全なものであること」といった抽象的な基準が羅列されているのみであり、有効性及び安全性について、ガイドラインのようなものは全くない。また、許可後の事後監視に至っては、指導要領を見ても、メーカー自身に対して、有効性や安全性の確認に努めるようすべきことが努力目標として定められているのみであり、承認後も再審査や再評価によって有効性・安全性の確認がなされる「医薬品」との違いは顕著である。
  2. (2) 審査内容の杜撰さ
    以上のような不十分な基準に従い、許可の可否が判断されるのであるから、必然的に審査も不十分になることは容易に想像できる。
    実際、「エコナ」シリーズについては、2003年6月当時、厚生労働省は、「グリシドール脂肪酸エステル」の安全性の問題、有効性・安全性に関する実験の不十分さについて認識していたのである(2003年6月薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会会議録参照)。
    このことから、他の特定保健用食品の審査も杜撰ないし不十分であることが窺えるが、現に独立行政法人国立健康・栄養研究所のホームページで公表されている各社の特定保健用食品の有効性及び安全性に関する臨床試験の概要を見ても充分な試験が行われていない。
  3. (3) 食品と医薬品の区別を曖昧にする問題
    有効性・安全性の確認が不十分であるにもかかわらず、一定の効果を謳っていることが、医薬品と食品の区別を曖昧にし、このことによってかえって国民の健康を害するおそれがある。
    特定保健用食品について、有効性の根拠として挙げられているデータは、「エコナ」シリーズに見られるように、被験者数十人に対して数週間摂取させた結果効果があったという類のものであり、(一定の医薬品と類似する効果を謳うものもあるにも拘わらず)安全性確認のための臨床試験も、被験者数十人に対して数週間実施したが有害事象が見られなかったという程度で、医薬品に比較して著しく不十分である。

4 基本的な行動方針

以上にように、特定保健用食品制度は、医薬品と食品との区別を曖昧にし、かえって国民の健康に対する弊害を生じさせるおそれがあり、表示上(形状・宣伝方法等)も、成分上も、医薬品を規制した薬事法と矛盾するから、当会議は、制度そのものを廃止すべきと考えるに至った。
そこで、当会議は、2010年3月23日、厚生労働大臣、内閣府特命担当大臣、消費者庁長官、及び消費者委員会委員長に対し、「特定保健用食品制度の廃止を求める要望書」を提出した。

5 到達点と課題

上記要望書の提出の際、行政側担当者からは特定保健用食品制度を問題視する意見も聞かれたが、制度そのものの廃止を求めるのはいきすぎではないか、有害事象が現に発生していない等の理由で、必ずしも高い関心を得ることはできなかった。実際、もとより特定保健用食品制度の廃止がなされることもなく、相変わらずテレビ等のCMがさかんに流れている。
引き続き、特定保健用食品制度の動向を監視していくことが求められていると考える。

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  • 薬害オンブズパースン会議
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2010-03-23
「特定保健用食品制度の廃止を求める要望書」提出