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■情報は患者の血液
薬害はいつもおこるべくして起きている。それは役人が患者市民ではなく、製薬企業や医療者集団との間に密接な連帯関係を築き、しかも彼らは自分達の立場を聖域として守るために、情報を独占してきたからだ。そこでは当然リスク管理が正常に行われるはずがない。
 しかし、本来生命権に必要な情報は市民にこそ届く道が確保されていなければならない。自分の生命・生存・生活に関する情報は、たとえそれが難解であっても、望めば誰でもアクセスする権利があるはずだ。図書館や医療機関でも「用語解説」の類いから、医療者が独占していたあらゆる医療医学関連の出版物が自由に利用できることが大原則だ。
 実際薬害オンブズパースン活動の中で私にとって苦しい作業であったと同時に、なにより嬉しかったのは治験論文を読んだことだった。内容は難解でも治験の「しくみ」や「専門用語」がわかれば、理解できる。その結果分かったのは、日本の新薬の治験システムがいかにいい加減かということだった。
■声の高まりは、流れを変える
 一方、私達にも問題があった。
 今まで、自分達の権利を「与えられるもの」「お願いしていただくもの」という関係や、力のあるものに従属し依存することに甘んじてきた結果、自分の権利を他者が管理していることに抵抗感が薄れていた。その反映が「知る権利」を明記できない魂抜きの国の情報公開法案であったり、あちこち抜け道だらけの自己診療記録(カルテ含む)開示の法制化案だったりしているのではないか?
 だが、流れは変わりつつある。
 今までの薬害オンブズパースンやタイアップグループ活動は厚生省や医薬業界に確実にボディブローとして効いている。私達は、時には行政よりも早く質の高い情報を入手できるし、何よりも正義と良心を持つ医薬専門家の公正なチェックとそれ以外の立場の人達によるクロスチェックが行われている。
 そういう力を溜めて、個別の薬たたきから、薬害オンブズパースン活動はいずれ薬害を産み出す社会構造自体へと踏み込まなければならないだろう。
 市民主導の薬害防止システムの提案と議決権を持った市民参画が、薬害構造の解体につながる。「いのちははかない、はかないから尊い」、だから声を上げよう、スクラムを組もう!

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