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 薬害オンブズパースンは、昨年6月に生まれたばかりの市民組織である。実際に動きはじめたのは夏くらいからだったから、これでまるまる1年間の活動が終わったことになる。薬害大国と呼ばれる不名誉な状態を少しでも改革しようと、ひとりひとりが意気込んで出発したわけだが、はたしてどれくらいの成果があっただろうか。次々と起こる事件や問題薬の発生に、まるで追いかけられるように過ごしてきた1年間だったような気がする。そのどれ一つをとっても、まだ未解決である。個別の問題は、それぞれの特徴をそなえながら、しかも根の部分ではがっちりと絡み合っており、それだけに解決の困難さを痛感させられた。製薬会社も国も、学会を中心とするいわゆる専門家集団も、市民が素手で立ち向かう相手としては、あまりにも強大であり、したたかである。各種報道機関やジャーナリストは、好意的な支援を寄せてはくれるが、移り気で継続性に乏しい。
 そうした中で、絶えず我々を鼓舞し、刺激してくれる存在は、薬害で自分の健康を害したり、家族や友人を失った人達の声であり、また、それらの人々に心動かされた隣人である。そういう意味では、薬害オンブズパースンの力の根源は、これを支えるタイアップグループにあると言っても過言ではない。いま各地に生まれつつある、タイアップグループとの有機的な連携プレイこそが、これからの薬害オンブズパースン活動の成否を決めるものではないかと思う。9月に北海道で開かれた札幌オンブズパースン会議は、台風という悪条件下にもかかわらず、札幌その他各地のタイアップグループも加わって、大成功をおさめた。それぞれの地域の特性を生かしたネットワーク作りと、全国を結ぶ情報交換と共闘が、いつかは強大な薬害の砦を突き崩す力になることを信じたい。

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