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● 米国での迅速承認とその取り下げ

 マイロターグは、米国において、「細胞傷害性化学療法の適応とならない60歳以上の初回再発CD33抗原陽性のAML患者」に対し、単剤で用いる治療薬として2000年5月に迅速承認されたが、製造販売後に臨床的有用性を確認するための臨床試験を実施することが要求された。

 一方、欧州でも同様のデータで承認申請がなされたが、欧州医薬品庁(EMA)は、2007年に承認不可と判断した。

 その後、2009年に米国での追加臨床試験の結果が公表され、標準的な寛解導入療法に本剤を併用した場合及び地固め療法後に本剤を追加投与した場合のいずれにおいても改善が認められない一方で、致死的な副作用は本剤を追加した場合の方が高くなることが明らかとなり、製造販売元である米ファイザー社は2010年に自主的に承認を取り下げた。

● 日本における経過

 日本においては、マイロターグは、他の再寛解導入療法の適応がない再発又は難治性のCD33陽性の急性骨髄性白血病症例を対象として2005年7月に輸入承認されたが、国内臨床試験の症例数が20例と極めて限られている一方、重篤な副作用の発生が認められていることから、販売開始後に全例調査を実施することが承認条件とされた。

 前記の米国での承認取り下げを契機に、マイロターグを承認している国は世界で日本のみとなったことから、厚労省は、2009年12月までの全例調査の結果を検討した。その結果、有効性については完全寛解率9.8%(承認時25.0%)、奏効率18.0%(承認時30.0%)、安全性については治療関連死亡率9.8%(承認時5.0%)、Grade3以上の肝静脈閉塞症(VOD)例33例(承認時0例)といずれも承認時より悪化していたが、承認時との条件の相違などを強調して問題はないとした。また米国での追加臨床試験については、日本での承認とは異なる患者群に対して実施されたものであるとして、国内での販売継続を決定した。

 これに対し、当会議は、2011年10月、承認時の臨床試験において有効性と安全性のバランスを失しており承認を与えるレベルになかったと考えられ、さらに全例調査においても有効性と安全性のバランスを欠いていることが確認されたとする「考え方」を公表するとともに、日本臨床腫瘍学会及び日本血液学会に対して公開質問書を提出したが、いずれの学会からも質問に対する回答はなかった。

● その後の経過

 その後、マイロターグは、新たに実施された臨床試験の結果に基づいて、2017年には米国で、2018年には欧州連合で、それぞれ日本とは異なる用法で承認を取得している。臨床試験の結果がないまま販売を継続させる日本と、結果が得られるまで承認しない欧米という構図は、抗がん剤イレッサの例を想起させる。

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