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 1997年6月の発足から25年となる。この25年間のちょうど中間といえる2010年に公表されたものが「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の提言である。過去の薬害事件の教訓はもとより、私が委員であったこともあり、当会議の活動に基づく問題意識も反映して、薬事行政全般にわたる改革案を示している。そして、これに基づき、PMDAの安全対策部門の人員は大幅に増員され、市販後安全対策にRMP(リスク管理計画)制度などが導入された。時間はかかったが、2020年には医薬品等行政評価・監視委員会も発足した。

 しかし、安全性にかかわるシステムの前進を上回る勢いで進んだのが規制緩和である。規制当局の財政的基盤は、企業が払う審査手数料等への依存を深める一方、早期承認のための例外的制度が次々に創設されてきた。これは国際的な潮流であるが、政府が製薬産業の創薬力と国際競争力の強化を重点課題と位置づける中で行われた日本の行きすぎた規制緩和は、海外からも批判されるほどになっている。早期承認のための例外的な制度の導入は患者のためと説明されているが疑問である。有効性と安全性の検証が不十分な医薬品が真に患者の利益に叶うのかを問う当会議の活動の重要性は今後も増すものと思われる。

 この25年で、当会議が公表した意見書・公開質問書は251、取り上げた個別薬の数は53である。その中には、ベロテック、SSRI、イレッサなど、そのときどきの医薬品をめぐる諸問題を体現した象徴的ともいえる医薬品がある。HPVワクチンもそのひとつであり、危険性の過小評価と有効性の過大評価、不十分な情報提供と過剰な宣伝、その背景にある医師と企業の不健全な経済的関係という薬害の典型的な要素が現代的な形で現れている。ワクチンという特性もあり、疾病啓発がマーケティングに最大限に利用され、商品名を記載した広告を用いなくても疾病の怖さを強調することによって宣伝を成功させることができ、そのために消費者直接広告の規制などを免れることが可能である。利益相反は、啓発団体等の介在によって把握しにくくなり、限界のある統計データが危険性を否定する「エビデンス」であるかのように誤った用いられ方をしている。そして、SNSが情報操作機能を果たし、被害者への差別と偏見を助長して、異論を唱えにくい環境をつくり出している。薬害の教訓に背を向けたHPVワクチンをめぐる問題は、今後も重要な課題である。

 薬害防止活動は一筋縄ではいかない。それだけに仲間の存在は大きい。薬害オンブズパースン会議メンバーと事務局の熱意、タイアップグループの皆さんをはじめとする多くの方々に支えられて活動を継続してこられたことに紙面を借りて改めて感謝を表したい。引き続きよろしくお願いいたします。

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