No.69 (2022-05-01)
本年4月からHPVワクチンの積極勧奨が再開されました。これに先だつ昨年11月、当会議は、厚生労働省の副反応検討部会と安全対策調査会の合同部会による実質上の再開決定を受け、反対の意見書を公表しています。
その理由として指摘したことは、まず多くの研究によって、HPVワクチンの副反応症状が、免疫介在性の神経障害であることが示されており、救済制度において障害認定等を受ける頻度が他のワクチンと比較して桁違いに高いことが示すように安全性が確認されていないということです。合同部会は、海外の大規模疫学調査を根拠に安全性に懸念なしとしていますが、これらの調査は、長期間にわたって重層的に症状が発現することを特徴とするHPVワクチン被害のシグナルを検出するには、設計が不適切です。
一方、有効性について、合同部会は、子宮頸がんを予防する効果を示すスウェーデンやイギリスの最近の研究報告を重視していますが、これらの研究はいずれも30歳より若い年齢を対象にしたものです。この年齢で子宮頸がんを発症すること自体が稀であり、これらの研究結果が生涯罹患率の減少を示すものでもなく、限界があります。
また、合同部会は、再開に当たっては、慎重さを求め、多数の条件を付し、厚労省も「寄り添う支援」をすると説明していましたが、このこと自体がHPVワクチンが安全性を備えていないことを示しています。
そこで、当会議は、積極勧奨再開に反対するとともに、①長期追跡調査、②治療法の研究促進、③治療体制の見直し、④十分な情報提供、⑤救済制度の運用の見直し、⑥被害者に対する差別等防止の啓発、⑦検診の促進、⑧被害者ヒヤリングを要望しました。
では、再開後の状況はどうか。一言で言えば、「慎重」「寄り添う支援」などとはほど遠い状況です。例えば、厚労省の広報誌『厚生労働』2022年5月号の特集記事「HPVワクチンについて知ってください 子宮頸がん予防の最前線」では、接種のメリットばかりが並び、危険性の記載が全くありません。また、自治体への説明資料をみても、調査研究については、疫学調査のみで、治療法の研究が記載されていません。また、厚労省研究班の「HPVワクチン接種後に生じた症状に関する診療マニュアル」には、多様な症状が十分に紹介されておらず、特に認知機能障害等が生じるということが示されていません。また、HPVワクチンの副反応が機能性身体症状であるとして、治療については認知行動療法が紹介されているのみです。こんな状態ですから、メディアやWeb上では過剰な接種勧奨が行われています。特に、視聴者が多いNHKの報道には大きな問題があります。
こうした現状を踏まえて、改めて意見を公表していきたいと思います。