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● SSRIとは

 SSRIは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor) の頭文字を取った略称で、抗うつ作用、抗不安障害作用を有するとされている医薬品である。うつ病・うつ状態に加え、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害等の不安障害領域への適応拡大が行われた。三環系や四環系の抗うつ薬と異なり、セロトニン系に選択的に作用すると宣伝され、精神科専門医のみならず、一般臨床医による処方が急拡大した。商品名としてはパキシル、ジェイゾロフト、デプロメール、ルボックス他多数の種類が販売されている。

 当会議は、SSRIをめぐる問題について、複数の観点から取り上げてきた。

● 自殺企図と衝動性亢進

 2008年に性機能障害、衝動性の亢進、及び自殺企図を取り上げた。厚労省他に実態調査と添付文書改訂を求める要望書を公表した他、日弁連に、刑事弁護をする会員弁護士に対し、衝動性亢進について注意を喚起するよう要望書を提出した。日弁連ではこれに応えて刑事弁護委員会が実態の調査をし、会員の弁護士への注意喚起に取り組むに至っている。

 また、同年、英国でBBC放送のニュース番組「パノラマ」とタイアップして、自殺念慮と衝動性亢進に取り組んだチャールズ・メダワー氏をゲストに招いて「暴走するクスリ−今、抗うつ剤で何が起きているのか?−」と題するセミナーを開催した。

 2009年には、これらの副作用が指摘されているにも関わらず、日本で青少年に対する臨床試験が実施されようとしていることに関し、プロトコルの詳細、参加施設情報や被験者への説明などの公開を求める要望書も提出した。

● 胎児毒性

 SSRIをめぐるもう一つの課題は胎児毒性である。2009年、パキシル錠を妊娠初期に妊婦が服用した場合、胎児に先天異常を起こす危険性があるという問題を取り上げ、添付文書の改訂を求める要望書を、厚労大臣及びグラクソ・スミスクライン社に提出した。そして、胎児毒性の問題をめぐって、米国の訴訟でパキシルの危険性について証言した2名の医師デレリー・マンギン氏とデービッド・ヒーリー氏を招いて「医薬品の安全性とマーケティング」と題するシンポジウムを開催した。

● ゴースト・ライティングと利益相反

 SSRIをめぐっては利益相反問題も深刻だった。2006年、東京HIV訴訟弁護団、医薬品・治療研究会との共催で薬害エイズ和解10周年記念シンポジウムを開催したが、そのゲストとして招かれた上述の英国の精神科医デービッド・ヒーリー氏が行った講演は、SSRIをめぐって展開されたゴースト・ライティングや利益相反の問題を通じて、現在の医薬品のあり方を根本的に問うものであった。その講演のタイトル「科学の外観をまとったグローバルビジネス」は、問題の本質を鋭く指摘し、今も鮮烈である。

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