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● 免疫抑制剤をアトピー性皮膚炎治療に

 プロトピック軟膏(一般名:タクロリムス水和物)は、アトピー性皮膚炎の治療薬である。もともと臓器移植時の拒絶反応抑制を目的とした免疫抑制剤として市販されていたタクロリムスの免疫抑制作用から、アトピー性皮膚炎への効果を期待して軟膏剤として藤沢薬品工業(現アステラス製薬)により開発された。

 アトピー性皮膚炎の第一選択薬とされていたステロイド外用薬とは異なる作用の「非ステロイド薬」として登場し、添付文書では、「ステロイド外用剤等の既存療法では効果が不十分又は副作用によりこれらの投与ができないなど、本剤による治療がより適切と考えられる場合に使用する」とされている。

● 小児用製剤の発売

 1999年に発売されていた成人用の0.1%軟膏について、発がん(悪性リンパ腫など)の危険性を伴う免疫抑制剤をアトピー性皮膚炎に適用することが懸念されていたが、さらに小児用(2歳以上)の0.03%軟膏の承認申請が2003年5月の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で了承され、承認に向けて大きく前進したのを契機に、当会議での検討対象とされた。

 当会議は部会審議のやり直しを求める緊急要望書を提出したが、小児用製剤は2003年7月に承認され、12月から発売となった。

● 発がんリスク

 発がんの危険性について、承認審査資料の動物実験結果では発がんや悪性リンパ腫が増加したデータが示されており、また海外の臨床使用経験から悪性リンパ腫や皮膚がんの発症例が報告されていた。一方で、臨床試験データとしては、2年までの追跡結果しか出ておらず、長期使用での安全性は確認されていない状態であった。

 そのため、添付文書の警告欄において、マウス塗布がん原性試験においてリンパ腫の増加が認められていること、及び本剤使用例においてリンパ腫、皮膚がんの発現が報告されていることを記載した上で、「本剤の使用にあたっては、これらの情報を患者又は代諾者に対して説明し、理解したことを確認した上で使用すること」という異例の指示がなされたが、患者が使用の是非を判断するのに十分な情報が提供されていないと考えられた。

 そこで、当会議は、2003年6月、これらの問題点について質すとともに、各種情報の開示を求める公開質問書を、藤沢薬品、厚生労働省、日本皮膚科学会に提出した。

 これに対する藤沢薬品の回答は、「注意事項を守り、適正にご使用いただくならば、プロトピック軟膏の発がんリスクは問題にならない」というもので、将来における発がんへの影響を調べるための追跡調査体制についても十分とは言えないものだった。

 そこで、当会議の考える問題点について、ホームページ上で、Q&A形式による情報提供を行った。

● 現在

 プロトピックの発がんリスクについては、成人用0.1%軟膏の発売から20年以上経過した現在も安全性が確認されるには至っておらず、動物実験結果等について説明し患者の理解を確認した上で使用するという添付文書の警告欄の記載はなお維持されている。

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