閉じる

 HPVワクチンの安全性を検討する厚労省の審議会(「以下、合同会議」・注)では、今の厚労省リーフレットの情報提供では不十分として、情報提供の内容・方法の見直しについて審議しています。

 しかし、その前提となるHPVワクチンの安全性について、6年前の合同会議で、ワクチン接種の痛みや恐怖による心身の反応であるとして重い副反応の因果関係が否定されたまま、その後も進んでいる副反応の知見が適切に検討されていません。それだけでなく、そもそも厚労省や合同会議は、HPVワクチン薬害訴訟の原告をはじめとする全国の被害者の実態について適切な検討をしていません。

 合同会議では、国内の副反応報告症例について一覧表で報告され、死亡と重症の症例についてだけ、厚労省の担当事務局が個別資料を出す取り扱いになっています。

 一覧表では個別症例の検討ができないことから、全国の原告131人について、重症症例とされた人数を調べると、わずか19人に留まっていることがわかりました(原告のうち16人は、副反応報告すらされていません)。被害者は今も重い症状に苦しんでいます。原告のうち36人は、医薬品副作用被害救済や障害者手帳の制度で障害が認定されているほどです。しかし、ほとんどの原告は具体的な検討対象とされてこなかったのです。

 このように、HPVワクチンの安全性の検討において最も重要である被害実態すら把握しないまま、情報提供の見直しについて審議することは誤りです。厚労省リーフレットは、HPVワクチンの多岐にわたる副反応の特徴のひとつである認知機能障害について、医療従事者向けリーフレットだけに記載し、国民向けリーフレットに記載していないなど、様々な問題があります。そのような問題をただすどころか、HPVワクチンの接種率の向上につながるように情報提供の内容・方法を見直すことになれば、それは深刻な被害の再発をもたらすものであって許されません。

 厚労省や合同会議には、まずは被害実態を十分に調査し、HPVワクチンの安全性について正しく審議することが求められています。

閉じる